January 2006
STEEL
強化される自動車構造
製造加工技術の発達に伴い、普及が進む新鋼材
ハイテン材(AHSS: Advanced High Strength Steel)が、ここ数年の間、自動車への適用における将来性を見せてきている。軟鋼に比べて2〜5倍の張力および降伏強度と、加工硬化の傾向により、この多相の鋼材は車体の軽量化と衝突性能を上げようとする自動車メーカーから反響を集めている。
こうした有益な鋼材がこれまで広く普及していなかった要因の一つは経済的なことからだった。まだ量産されていない新鋼材の導入はコストが高く、製造面での課題もあった。
プレス加工および溶接時に、新鋼材がこれまでとは異なる反応を示すこともある。この課題の解決に向け、各自動車メーカーはここ数年間で前進し、新鋼材を適用した製造経験を重ねてきている。
この実例が、2005年3月に米国鉄鋼協会(AISI:American Iron and Steel Institute)による「Great Designs in Steel Seminar」で紹介された。同セミナーでは30の事例が発表された。そのうちの10の事例は各製造メーカーの代表によるもので、新しい鋼材の製造加工技術の進歩状況や、既存の、あるいは将来の自動車への適用を増加させる計画が説明された。以下に三つの事例を紹介する。
BMW 3シリーズ
ハイテン材について語られるとき、衝突性能を中心に議論が展開することが多い。これには正当な理由があるが、新鋼材における剛性や質量のバランスを良くするというような特性も重要なポイントである。
これらの特性がBMW 3シリーズに生かされていることを発表したのは、BMW社ホワイトボディ工程の鋼材を担当するマネジャーであるMarkus Pfestorf氏。3シリーズには大量の強度鋼材が採用された。
同社は低強度鋼材と高強度鋼材を分ける境界を、降伏強度180 N/mm2 として定義している。Pfestorf氏は、新3シリーズの平均最小降伏強度は294 N/mm2 となっており、従来の3シリーズにおける178 N/mm2 に比べて改善されていると発表した。
Ford 500
この新セダンにもハイテン材が使われている。DP600鋼が15質量パーセントの割合でFord 500の車体に採用された。特別新しいやり方でハイテン材を用いたのではなく、Volvo P2Xプラットフォームから発展させた車体構造とエネルギー管理を取り入れている。
車体前部のレールとロードパスへの適用法は、AISIの超軽量鋼製車体プロジェクト(ULSAB-Advanced Vehicle Concepts)のデザインを思い起こさせる。Ford社の車体CAE部門のマネージャであるMichael Lee氏は、Ford 500とFreestyleが新鋼材実装のサクセスストーリーを象徴していると説明する。DP600を採用するために、同社は鋼材の供給、プレス加工、溶接工程などの様々な課題を乗り越え、結果として衝突性能と剛性の向上を上げたという。
Volkswagen Golf V
レーザー接合部が56mあるGolf Vは、レーザー溶接やろう付け加工の将来性を見せている。これら二つのレーザー加工は、今後の自動車メーカーにおけるハイテン材の適用増加において極めて重要だ。「レーザー溶接の適用においては、Volkswagenがトップメーカーである」と語るのは、AISIのSenior Automotive DirectorであるRon Krupitzer氏。
ルーフ接合部、サイドパネル、車体前部モジュールの取付板など、様々な車体部分がレーザー溶接で加工されている。これらの溶接部にすべてハイテン材が使用されているわけではないが、Krupitzer氏は、新鋼材の普及とともにレーザー溶接加工がより重要になることを指摘している。
「レーザー溶接加工は、従来型の溶接法に比べて溶接熱影響部分や熱脆化部分が少ない」同氏は、レーザー溶接のこれらの要素が新鋼材の強度を維持すると説明しており、「溶接工程で新鋼材の微細構造を損傷しないように注意を払う必要がある」と付け加えている。
Advertisement