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MAY 2006
高品質、短納期、低コストの技術アウトソーシング


 「近い将来、海外への技術アウトソーシングが一般的になるだろう」。米QuEST(Quality Engineering and Software Technologies)社のマーケティングおよび事業開発を担当するバイスプレジデントのBejoy George氏は言う。同社は、顧客の製品開発プロジェクトのために専門のチームを作り、CADや解析ソフト、PDM、PLMツールなども駆使して、世界中のどこの顧客に対しても高品質の設計や解析などの技術サービス低コストでを提供するサプライヤーである。個別の顧客に合わせて技術のアウトソースサービスを提供できるのが同社の強みである。
 例えば、日本にいながらにして、インドなど、エンジニアの労働力がまだ低コストな地域で設計や解析を行い、その利点を製品開発などに生かせる。「我々のグローバルな製品開発(Global Product Development:GPD)により、顧客は低コストの地域を利用でき、時差も利用する。また、特有の技術を持つエンジニアの多い地域を利用することもできる。このため、製品を早く、安く開発できる」とGeorge氏は言う。同社のメリットは、品質を落とすことなく、開発期間を早め、そして、コストをも下げられるということだ。
 顧客のいる世界各地でエンジニアを現地採用し、そのエンジニアが窓口となって顧客とコミュニケーションを取るため、顧客は母国語でサービスを受けられ、意思疎通の問題がほとんどない。異なる顧客のチーム同士を区別し、データを厳重に管理することで、顧客の知的財産を保護している。
 「我々は、プロセスオートメーションや既存製品の設計改善などの主力ではない仕事を請け負う。このため、顧客は、新製品の開発などのより価値の高い仕事に集中して取り組むことができる」とGeorge氏は言う。QuEST社は、既存の製品設計を改善し、効率化することで、大幅なコスト削減効果をもたらす。また、既存製品の改善だけでなく、新製品の開発でも顧客を支援している。
 顧客から請け負った業務を分類し、世界各地域の特長に合わせて割り振りし、平行して進める。同社が低コストの地域で多くの業務を行っている間、顧客は主力の業務に注力できる。QuEST社の支援により、顧客は間接費やソフトウエアにかかる費用、運用費などを削減できる。
 QuEST社は、プロジェクト管理や設計、モデリング、有限要素解析(FEA)、流体解析(CFD)、メッシュ生成などのさまざまなサービスに対し、1時間当たり25〜70ドルを顧客に請求する。この料金は、設計やサービスの複雑さによって変わる。
 品質保証に関しては、シックスシグマ※1や、ISO 9001を導入しており、AS 9100※2とISO 27001※3の認証をそれぞれ2006年6月と2006年6、7月に受ける予定だ。QuEST社の世界各地にいるすべてのエンジニアは、各プロジェクトの品質を検査し、顧客の仕様書通りの品質を確保する。
 これまでは、ソフトウエアの開発受託や、BPO(Business Process Outo-sourcing)などのITのアウトソーシングが主流だった。設計や解析などのデータはかなり多く、そして巨大だ。例えば、アメリカと日本との間でデータをやりとりするには、強力な通信インフラが必要である。その上、4、5年前まで通信コストはかなり高価だった。しかし、現在は圧縮技術の発展などにより、データのやりとりがスムーズになり、さらに通信価格も下がった。CADや解析ソフト、PDM、PLMツールなどの価格も従来に比べ低下してきたため、技術サービスのアウトソーシングを全世界規模で行えるようになってきた。同社は、顧客の利用するCADや解析ソフト、PDM、PLMなどの各種ツールに対応している。


海外の低コストの技術アウトソーシングが次世代の主なトレンドになるだろう、と米QuEST社、マーケティングおよび事業開発担当のバイスプレジデント、Bejoy George氏は言う。顧客は低コストの地域を利用でき、時差も利用可能だという。


エンジニアの派遣ではなく、プロジェクトを受託


 QuEST社には日本やアメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、中国、インドなど、全体で850人以上のエンジニアがいる。特に、現在、インドのBangaloreに約650人、アメリカに約100人のエンジニアがいる。その数は年々増え続けている(右上の棒グラフを参照)。日本では横浜にオフィスを開いたばかりである。
 同社は、顧客の製品や開発プロセス、製造プロセス、システムなどを十分に理解してから、その顧客に合った、さまざまな種類の技術サービスを行っていく。つまり、それぞれの顧客に合わせてカスタマイズできるのだ。
 「顧客に多くの支援を与えられるようにしている。現在、顧客の数は少ないが、これらの顧客を長期間にわたって支援している」とGeorge氏は言う。「エンジニアを一時的に紹介するのではなく、長期間、顧客をサポートしていくのだ」(同氏)。
 同じチームが同じ顧客を長期にわたり支援するため、長くなればなるほど、顧客やそのプロセス、製品などをよく理解でき、より生産性の高い仕事が行えるようになる。また、顧客の業務の最大負荷に合わせて、大きなチームを作ることもできるという。「一人のエンジニアを今日はこっちの顧客へ、明日はあっちの顧客へなどと変えていたら、こういうことはできないだろう」とGeorge氏は言う。
 QuEST社は、多くの経験を積んだエンジニアや若いエンジニアをさまざまな業界から雇用している。そのため、さまざまな業界の顧客に対応できる、とGeorge氏は言う(右上の円グラフを参照)。航空宇宙業界、電力業界(発電業界)、石油/ガス業界、自動車業界、その他製造業全般向けに技術サービスを提供している。
 例えば、英Rolls-Royce(ロールス・ロイス)社は、インドのバンガロールにある同社の100%子会社であるRolls-Royce Operations India社を通して、主力でないエンジニアリング業務や支援業務をQuEST社に発注している。
 「これらの業務はさまざまで、100時間未満で済むものから、1万時間以上かかる大規模なデータ変換プログラムにまで及ぶ」とRolls-Royce Operations India社の統括マネジャーである、Mike Bradley氏は言う。同氏によれば、業務の範囲は、ガスタービンのライフサイクル全体から選ばれ、ここでは製品とシステムの設計や、コスト削減のための設計、モデリングや詳細設計、技術解析、ガスタービンの性能試験、試験技術、地上支援装置の設計、技術文書作成などのサービスが得られるという。
 「運営費の削減に加え、当社のエンジニアが主力技術に集中でき、技術革新を加速させるなどの利点が得られる。また、Rolls-Royceグループ全体からの業務の最大負荷に対応するための人的資源を作り出せるなどの利点もある」(Bradley氏)。同氏によると、インド工科大学で教育を受けた卒業生のレベルは高いという。「現在、現地で採用した100人のエンジニアからなる専門のチームを持っている。2006年には、このエンジニアの数を倍に増やす予定だ」とBradley氏は言う。このエンジニアたちに任せる業務量とその効率は、Rolls-Royce社にとってかなり重要なはずだ。
 「我々はQuEST社と業務上密接な関係を持っており、お互いの間には相乗効果と共通の価値観がある。Rolls-Royce社は、この関係が成長し続け、双方の利益をもたらし続けることを確信している」(Bradley氏)。この契約のサイズと範囲は主に、見通した業務負荷に対し、コストや品質において完全なソリューションを提供するQuEST社の能力に依存する、と同氏は言う。しかし、将来的な負荷はRolls-Royce社内のさまざまな要因に依存している。
 「我々の知的財産権(IPR)を保護したり、我々自身と顧客の安全保障(セキュリティ)規制に従うなどの最重要の必要条件や、国際的な輸出の管理条件などの法律上の義務、さらにはRolls-Royce社の取締役会で決められた戦略上の方針に依存する」とBradley氏は言う。


増加するQuEST社のエンジニア数
現在、QuEST社には日本やアメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア、中国、インドなど、全体で850人以上のエンジニアがいる。その数は年々増え続けている。

QuEST社のエンジニアの経験年数
QuEST社は、多くの経験を積んだエンジニアや若いエンジニアをさまざまな業界から雇用しているため、さまざまな業界の顧客に対応できる。


労働市場はさらにフレキシブルに


 日本では、技術コンサルティングのニュートンワークスと2001年に業務提携し、ニュートンワークスを通して、自動車およびエレクトロニクス業界の顧客を支援している。電力や石油、ガス業界向けには直接サービスを提供しており、現在、QuEST社は東芝の社内カンパニーの一つである電力・社会システム社(Industrial and Power Systems & Services Company:IPS)の設計サイクルタイムとコストに直接影響を及ぼすいくつかの重要なプロジェクトを支援しているという。
 これらのプロジェクトには、6カ月〜2年のものがあり、設計のサイクルタイムをほぼ60%削減、コストも40%以上削減できるだろうという。
 「製品化までの期間を短縮するための設計プロセスの自動化や、有限要素解析(FEA)、流体解析(CFD)、詳細設計、製造メーカーの管理を支援するサービスなどの特定の機能において東芝を支援していく」とQuEST社、社長のAravind Melligeri氏は言う。
 現在、QuEST社の60人以上のエンジニアが日本のメーカーを支援しているという。同社は、日本でさらに多くの仕事をするために、日本の顧客、その製品およびプロセスをより深く理解しなくてはならない。「このため、我々は、日本人エンジニアの採用を増やしている」とGeorge氏は言う。
 日本やアメリカ、イギリスなどのコスト高の国々では、経済価値の連鎖の影響から、その国のエンジニアは、製品開発のライフサイクルを短縮する傾向が強い。しかし、製品を開発するエンジニアは、主力でない業務も常に行わなくてはならず、労働コストがまだそれほど高くない国で働くエンジニアたちがこの業務を代わりに行うケースは増えるという。
 QuEST社は、これら高コストの地域から、概念設計やプロジェクト管理、顧客管理、工程改善に関する業務を請け負い、インドや中国などの低コストの地域からは、詳細設計や設計自動化、技術解析、サプライヤーの管理、金型の設計や組み立て、製造工程設計などを請け負う。インドには、ローエンドからハイエンドの設計および分析技術を持つエンジニアがいる。コストを下げなくてはならない状況においても、納期や質を下げたくないと考えるプロジェクトに対してぴったりな人材を提供できる。
 また、部品調達についても支援できる。「顧客は、製品設計などの業務以外に、部品調達も要求してくる。顧客の基準を満たすため、顧客から詳細をもらい、これらの部品を製造できる仕入れ先を探し、顧客に紹介している」とGeorge氏は言う。

 中国では、主に低価格の部品調達や生産支援を行っている。インドでも、低価格の部品調達を行っている。
 日本では、団塊世代のエンジニアが定年退職した後、エンジニア不足になるだろう。しかし、製品はますます複雑になっており、さらに納期も短縮されてくる。設計や解析、試験などに多くのエンジニアが必要になる。「日本では、まだ数百人のエンジニアからなるチームを作っている顧客はないが、これから我々は時間をかけて、日本メーカーとこうした関係を築いていきたい」とGeorge氏は語っている。
(大村 泰憲)



※1 シックスシグマ
シックスシグマ(6σ)とは、商品の不良率を0.00034%(製品100万個あたりの不良率=3.4個)に抑えることを目指した品質改善・工程管理手法。
※2 AS 9100
AS 9100は、航空宇宙産業認証規格。
※3 ISO 27001
ISO 27001は、情報セキュリティマネジメントのISO規格。



QuEST社の日本国内の連絡先:
TEL:045-670-7044
info_japan@quest-global.com



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ウェブ情報源
■QuEST社についてはこちらから:
http://www.quest-global.com/
■Rolls-Royce社についてはこちらから:
http://www.rolls-royce.com/
■東芝の社内カンパニーの一つである電力・社会システム社についてはこちらから:
http://www.toshiba.co.jp/about/company/ps_j.htm



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