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施行目前に迫ったRoHS指令以外にも、欧州には新しい水枠組み指令、ELV指令、WEEE指令、建物エネルギー効率指令、など数々の環境法案が存在する。さまざまなルールをつくり実行していく欧州の環境関連法、その政策の背景にある考え方は何か。2006年4月11日に東京・上智大学で開催された欧州委員会環境総局長のMogens Peter Carl氏による講演「EUの環境政策について」から探る。 緑の競争力 「経済成長に寄与するのは競争力だ。そして競争力に必要なのは革新である。その革新を生み出すのが環境政策だ」とCarl氏は語る。環境政策といえば、健康的な暮らしと持続可能な社会を守るためとばかり思われがちだ。しかし、今や環境政策がEUの経済成長を促しているという事実が浮き彫りになっている。 EUの環境関連産業は世界市場の約1/3を占め、EUの貿易黒字に貢献している。EU内の環境産業従事者はすでに200万人を超え、しかも年率5%で増加している。これはすでにEUの経済成長率を上回る数字である。 2005年に世界経済フォーラムが発表した「世界で最も競争力のある国(Global Competitiveness Report)」の上位4カ国中の3カ国(フィンランド・スウェーデン・デンマーク)は、EUの中で最も高い環境保護基準をもっているのだ。 世界的に大きなシェアをもつ産業がないデンマークだが、風力発電に関しては世界市場の40%を占めている。炭素を隔離することで温室効果ガスや大気汚染物質を除去できる技術の導入準備を進めていることなど、環境政策が経済成長を裏付ける例は枚挙に暇がない。 法規制を伴う緑の競争力が市場を活性化し、新たな技術創出や雇用の機会をつくり、経済成長を促している。この10年間でEU経済は25%の成長を果たしているが、3年前には温室効果ガスの排出量を1990年のレベルより下回らせている。 環境保護対策は賢い投資 一方で、環境保護対策は企業にとって大きなコストであるという世論はEU内でも未だに根強い。しかし、環境保護対策を取らなかった場合と、事前に対策を取った場合のコストを比べてみると、その考えは間違った解釈であることがよくわかる。 現在、これまでに環境保護対策が取られていなかったケースが問題として明るみに出ている。例えば、日本と同じように、EUもアスベスト(石綿)問題に悩まされている。この事態を収拾するのに必要なコストは4,000億ユーロ。この問題のために、EU内の大手保険会社が破産の危機にも直面した。さらに、汚染除去のコストは今後15年間で150億ユーロといわれている。 汚染物質を事前に把握しリスクを回避していれば、これほど多くのコストはかからなかったはずである。同じ過ちを繰り返さないためにも、2007年施行予定の既存化学物質の登録と評価を義務付けるREACH規制の意義は大きい。この登録・評価にかかるコストは11年間で23億ユーロと、ある評価機関により算出されている。しかし、これは汚染除去のコストよりも、はるかに少ないのである。 地球温暖化による環境変化が引き起こす問題への対応コストが試算された例もある。英国保険協会によると、今後70年ほどの強風による保険の損失額は、米国で起こりうるハリケーンだけでも年間1,000〜1,500億ドルと推定されている。これは、温暖化の原因となる温室効果ガス削減の対策費総額に等しい。 これらの予防措置は、問題に対処するコストに比べると少ない、あるいは同等だ。環境保護対策はコストとしてではなく、未来への賢い投資と捉えるべきだろう。 日本の製造業もさまざまな環境対応を迫られている。しかしその対応一つひとつは、単に環境保護のためだけでなく、自国の経済成長へとつながっているのである。 (コントリビューションライター佐々木牧子)
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