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AUGUST 2006
車載マルチメディアのこれから
次世代のカメラ利用の安全システムはもちろん、車内映像システムの帯域ブースターとして、日産は銅ケーブルと光ファイバによるネットワークの試験を行っている

カーナビ、DVDディスプレイ、リアルタイムカメラを搭載した次世代車載映像ソリューションには銅ケーブルの活用を予測する

著者_CHUCK MURRAY
シニア・テクニカルエディター

 自動車メーカーがマルチメディア問題に直面することになろうとは、10年前には誰も予想しなかったに違いない。しかし、それは現実になった。車に何台もの電子ディスプレイを装備し、さらにそれらディスプレイをDVDプレーヤー、カーナビ、カメラに接続することを技術者たちが検討するようになった。この構想によれば、これからの自動車は、正面、側面、および後部に取り付けられたカメラから、車体の周りの映像を得る。GPS衛星からの位置情報をダッシュボード・ディスプレイに表示し、複数の後部座席モニターでは、アーノルド・シュワルツェネッガーやリーズ・ウィザースプーンのようなハリウッド・スターを見ることができる。

IEEE 1394コネクタ・コアは400メガビット/秒のシステム帯域幅を維持する

膨大な情報量

 これはいわば、映像氾濫現象のクルマ環境バージョンであるが、我々にとって身近な自動車に対して起ころうとしていることなのである。
 しかしそうなるためには、自動車メーカーならびに関連メーカーが、実現に向けての問題解決に取り組む必要がある。このためのソリューションはこれまで単純なものであった。ダッシュボードにDVDプレーヤーを埋め込み、ルーフを経由して後部まで個別の配線をするというものである。しかし、この方法は膨大な情報量を処理しなくてはならないマルチメディア分野には適さない。どれだけ多量の配線をしたところで、帯域幅はいつまでも不足のままだろう。


多チャンネル、広域周波数帯の確保

  「こういったアプリケーション用に、多チャンネルで非常に幅広い周波数帯域を備えたネットワークが必要である」と語るのは日産自動車先進技術センターでマルチメディア計画アシスタント・マネジャーのRicardo Wong氏。「(配線用)煩雑なハーネスを解決するインフラから開発する必要がある」
 つまるところ、ワイヤハーネスの問題こそが鍵を握っている。それは主に、安全システム、ドライブ・バイ・ワイヤ(センサー・サポート走行)システム、照明、そして座席やドアのロックのために、多くの専用車載ネットワークが、既に続々と離陸待ちの状態にあるからである。さらには、実際そのほか全てを実現しそうなコントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)がずっと待機しているではないか。そのため、マルチメディア・バスは、それがどんな形状を取るにしろ、これらとは別のネットワークとなり、既に混み合った車体内部スペースの分け前を待つことになる。


光か銅か

  とはいえ、自動車メーカーの間では、これに光ファイバ、銅ケーブルまたは両者の組み合わせの、どのネットワーク媒体を使用するべきかという問題に結論がでていない。ヨーロッパの自動車メーカーは、10年間以上にわたって、プラスチック光ファイバ(POF)を使用して設計してきたが、より広い帯域幅の必要性が明らかになるにつれて、銅ケーブル方式がPOFの補助または代替役として有力との見方が強まりつつある。
 「我々は銅ケーブルとPOFの両方で試作を続けている」とWong氏は語る。「それぞれに長所と短所があることが分かった」


EMIへの対処

 かつてはそうでなかった。5年前、圧倒的多数の技術者は、銅ケーブルには電磁波干渉(EMI)問題が生じやすいので、車載アプリに使用することはできないと強く主張していた。とりわけ、バッテリー・ケーブル、ポンプ、モーター、ラジオ、車載ネット通信技術システムおよびその他諸々の原因による潜在的なEMI問題が、車両の環境に詰め込まれていることを考慮すれば、この論理はもっともであるように思われる。
 しかし今では、銅ケーブルにEMIの懸念はないと主張するかなりの数の専門家が出てきた。1990年代前半にApple Computer社で銅ケーブルの「Fire Wire」を共同開発し、現在Broad com社のテクニカル・ディレクタを務めるMichael Teener氏は「銅ケーブルを実用化する多数の方法を開発した」と語る。「問題の正解を知る人を探すならば、この場合、私ということになる」


メルセデス・ベンツMクラスは、マルチメディア・ネットワークとしてMOST方式の光ファイバーケーブルを用いる

コンピュータ業界の経験

 Teener氏によると、1990年代の初め、コンピュータ産業のほとんどの技術者は、銅ケーブルにはEMI問題があるのではないかと懸念し、銅ケーブルに代わって光ファイバを用いようとした。単に「2、3のありきたりの変調技術」を用いるだけで銅ケーブルを有用なものにすることが可能であることを、同僚が彼に確信させるまでは、自分も光ファイバが必要であると信じていた技術者のひとりであった、と同氏は言う。
 「それを信じるのには時間がかかった」と同氏は回想する。「一旦ある技術と関わり合ったら、それが不要かもしれないなどということを認めたくないものだ。それはちょっとした苦痛だから」
 結局、Teener氏は「FireWire」としてよく知られている銅線ベースのIEEE 1394ネットワーク・ケーブルの開発に参加した。この技術は、ホームコンピュータ周辺装置からカメラや産業制御システムにまで及ぶアプリケーションの基本幹要素となっている。


銅ケーブルの巻き返し

 Teener氏の導きに従って、現在では、自動車業界の多くの技術者が、銅ケーブルが自動車に支障なく使用できると確信している。銅ケーブルが400メガビット/秒に近い帯域幅を提供し、関連メーカーがやはり400メガビット/秒をサポートするケーブル、コネクタおよび半導体コントローラを製造するようになったことで、自動車エンジニアの関心は銅ケーブルに開かれつつある。
 最近では、富士通が車載仕様のIEEE 1394(FireWire)で動作するよう設計した400メガビット/秒のマイクロコントローラを発表した。この製品にはトランシーバを含む物理層が組み込まれており、車載マルチメディアにおける1394銅ケーブル環境で使用する最初のシングル・チップ製品であると言われている。同様にしてMolex社は、車載マルチメディア・アプリケーション用に耐久性を高めたパッケージを持つ、400メガビット/秒、1394b銅コネクタ・コアを開発した。これら新製品はどれも-40〜85℃の車両温度域に適合するように設計されている。
 この分野の研究に関して語る自動車メーカーはほとんどないが、日産はこの技術を試験中であることを認めている。また、Ford、PSA プジョー・シトロエン、そのほか某アジア自動車メーカーも検討中であると噂されている。


光も銅も

 多くの観測筋は、自動車メーカーがシールドツイストペア1394銅ケーブルをプラスチック光ファイバと組み合わせて車両に使用すると考えている。一般的に、プラスチック光ファイバは配線距離が比較的長く、車載アプリケーションのバックボーンとして使用される一方、1394の銅線はバックボーンと特定のコントローラ・モジュール間の比較的短い配線に使用されることになる。
 技術者によると、この組み合わせの理由は、プラスチック光ファイバには18mの最大長がある一方で、銅ケーブルはEMIに配慮すると約4.5m以上使用することができないからである。逆に、ルーフ・パネルにおいては、温度が急上昇する場合、プラスチック光ファイバがうまく機能しないので、銅ケーブルを選択すると良い。要するに、自動車技術者いわく、2つのテクノロジの組合せがよさそうだということである。
 「我々は光ファイバと銅ケーブル両方を使用するつもりだ」とMolex社の製品戦略マーケティング・マネジャーBob Fust氏は述べる。「どんな組み合わせが最良であるかはOEM先が決める問題だ」


富士通はシングルチップ・コントローラにIEEE1394の全機能を搭載している。現時点での一般的プラスチック光ファイバ・コントローラでは、通常、3チップ構成ソリューションを採用している

帯域幅、帯域幅、帯域幅

 そのような理由で、IEEE 1394トレード協会は、数年間銅ケーブルを奨励した後に、プラスチック光ファイバ用の規格を作成した。一方、POFの使用を強く支持しているMOST(Media Oriented Systems Transport)協議会は、この技術の銅ケーブル版の規格を近年完成させた。「ePhy」として知られるその規格では、50メガビット/秒で信号を送信する無被覆ツイストワイヤを採用するMOSTの電気バージョンについて記述規定している。
 このシステムの帯域幅は1394銅ケーブルのおよそ8分の1であるが、MOSTプロトコルは同期しているのでEMIを防止するための被覆が不要であるという利点があるとMOSTの支持者は語る。
 「主な利点は、自動車内いたるところにノイズを放出するような電線がないことである」とStandard Micro Systems Corp.(SMSC)事業開発部ディレクタ兼MOST協議会米国担当であるHenry Muyshondt氏は語る。


MOST vs. IEEE1394

 これに対して、1394技術はMOST規格より高速で、更に光を電気へ変換する必要がないのでコネクタを安価にできる、と1394の支持者は主張する。
 依然として、BMW、メルセデス・ベンツ、ポルシェ、ボルボおよびアウディを含む欧州車メーカーは、MOSTプロトコルを支持する巨大な団体であり、既に37を超える車種にMOSTが使用されている。さらに本年中にはMOSTベースの車両9車種が発売され、MOST規格部品の使用は総数で約3,000万個にまで到達すると予測されている。MOSTベースの銅ケーブルを採用した初の車両が市場に登場するのは1〜2年後であろうとMuyshondt氏は付け加えた。
 専門家筋もまた、MOSTはこの10年間にわたる開発の優位性を維持するので、とりわけ導入初期の段階では、銅ケーブルほど扱いにくいものにはならないであろうと見ている。
 「つまるところ銅ケーブルは銅ケーブルであるから、ノイズを拾ってシステム内に持ち込むことになる」とBroadcom社のTeener氏は言う。「設計はすこしばかり難しくなるだろうが、いずれ安く、さらに高速になるだろう」。
 確かに、速度の問題が残るので、いくつかの自動車メーカーは銅ベースの1394に関する研究を継続するつもりだと言っている。メーカー筋では、最終的に1394b物理層で400メガビット/秒を越える帯域幅に達することができると見込んでいる。事故防止を支援するリアルタイムのリヤビューおよびサイドビューカメラを必要とする次世代車載マルチメディアの開発にとって、このレベルの速度性能は非常に重要である。


自動車におけるPOFと1394銅ケーブル車載型の組み合わせの配線例
配置案:プラスチック光ファイバは、カーナビ表示、ラジオ・ヘッドユニットおよびDVDプレーヤーを収容するダッシュボードから車両後部への比較的長い配線に使用する。IEEE 1394銅ケーブルはコントローラ・モジュールからそれぞれの後部座席ディスプレイへの配線に使用する (ダイアグラム提供:Molex社)

自動車の未来形

 これに加え、専門家の予見によれば、前面に取り付けたカメラが前を走行する車との車間距離を保ちながらクルーズ走行する制御機能(ACC)、自動車線維持走行および衝突防止などのアプリケーションに使用される日がやってくる。そのようなシステムはすべて映像ネットワークを使用することになる。
 「現時点では、ネットワークはまだ通信向けである」と日産のWong氏は語る。「だが今後は、1394ネットワークを(安全)アプリケーション用のリアルタイムカメラに接続する必要性が生じるだろう」
 いずれトラックおよびセミトレーラーに、そのような安全対策が義務づけられることで、高速ネットワークが必須になる日が来る可能性がある、と業界の観測筋は付け加える。「トラック運送業に対しては、法規による車線維持支援システムの搭載が最終的に義務付けられる可能性がある」と電子ビジネスの国際基準に関する業界コンサルタント会社Interactive TechnologyのMax Bassler氏は語る。「これは、単に乗用車向けだけの技術ではないのだから」
 こういった理由から観測筋は、時が経つにつれて銅ケーブルの採用が不可避になるであろうと確信している。彼らが指摘するように、銅ケーブル技術はかつて懐疑的状況を乗り越えてきたのである。「銅ケーブルは、航空宇宙、人工衛星およびレーダー用診断バスなど、使用者がEMIのリスクを冒すことができないところで使用されている」とTeener氏は言う。「銅ケーブルがそれらのアプリケーションで使用できるのであれば、自動車でも使用できる道理だ」




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ウェブ情報源
■自動車のデータバス: http://rbi.ims.ca/4402-556
■IEEE 1394トレード協会: http://rbi.ims.ca/4924-568
■MOST協議会: http://rbi.ims.ca/4924-569



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