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PLM
NOVEMBER 2006
Photo:渡辺 二之
コクリエイト、企業買収で事業拡大を志向
ノンヒストリベースの利点、日本企業が最大享受
ウイリアム・ガスコインCEOに聞く


PLMソフトウェアの開発供給で製品開発ソリューションを展開するCoCreate SoftwareのWilliam Gascoigne CEOはこのほど開催されたコクリエイト・フォーラム2006のユーザー会の折に来日した。これまでにも増して日本市場との関わりを深める同社の経営戦略、商品開発戦略を聞いた。


DNJ:コクリエイトのライセンス数は今年世界ベースで15%増加、また新規の導入だけ見れば80%増加する見込みだ。この好調の原因は何か?

Gascoigne:原因は3点あるだろう。第1に我々の製品戦略がユーザーから支持を得たことだ。軽量のPLMである3G (第3世代)PLMは、レスポンスがスピーディで使いやすい。第2に2Dから3Dへ人々の意識を向けさせるためのプロモーション効果。あらゆる2Dユーザーをターゲットに、コクリエイト3Dへの移行プログラムを実施して多大な成果をあげている。第3は特に欧州市場で実施している特別プログラムだが、競合するオートデスクInventorの3Dユーザーにターゲットを絞り込んでコクリエイト3Dに転換させる取組みの成功があげられる。

DNJ:日本市場での取り組みは?

Gascoigne:日本は我々が独特の強みを発揮している市場だ。日本ではヒストリベースのCADユーザーをノンヒストリベースのコクリエイトCADに転換させることに成果をあげてきた。日本の設計者は拘束条件をベースとするモデラーと、ただ作りたい形状を直接定義して作成できるモデラーとの違いを深く理解しており、ダイナミックモデラーと呼ぶカーネルモデラー技術の利点を世界のどの地域のユーザーよりも有効に享受している。

ハイテク・エレクトロニクス産業にフォーカス

 われわれの主要なユーザーは日本のエレクトロニクス製造業、エレクトロニクス精密機械業であり、競合の激しい民生電子市場向けの製品開発が多い。民生分野は市場のターゲット消費者の反応をうかがいながら製品リリースの直前まで製品の設計変更が頻繁に起こる環境にあり、そこでは変更したい形状を指定して編集することが容易な非拘束ベースのモデラーの利点が最大限に発揮できる。拘束条件が入り組んだヒストリベースのモデラーでは短時間での頻繁な変更など全く不可能で、設計者にしてみればゼロから設計し直した方が楽なほどだ。
 コクリエイトは日本市場をずっと重視してきた。われわれは益々ハイテク電子機械分野へのポジショニングを強めている。日本が重要なのは、このコア領域における有力企業がここにひしめいているからだ。だから我々は商品戦略の重要な部分を日本との関わりから決定してきた。と同時に、企業買収の戦略を決定するのにも日本が深く絡む。

DNJ:企業買収に具体的な動きがあるのか?

Gascoigne:米HBK Investmentsがコクリエイトの株式を全額取得して以降、彼らは企業買収を目的とする資金を上積みしてきている。いまや私は私が自由にできる時間の90%を買収する企業探しに費やしている状況だ。すでに買収を検討する企業リストは15社から20社にのぼっているが、最初の発表に至るまでの時間が一番長くかかる。
 最初の買収企業を発表するタイミングは2007年中となる見通しだが、その後は間をおかずに続けて第2、第3の買収企業名を公表していくことになるだろう。事業拡張のために間違いのない企業を選択し、買収することは簡単な作業ではないが、複数の話を同時平行して進めている。

DNJ:企業買収の主な狙いはポートフォリオの拡張と理解してよいか?

Gascoigne:その通りだ。新製品、新技術の追加による製品ポートフォリオの増強を図る。また設計、製造、さらに我々の呼び方で言えば、統合・集約(integration and aggregation)の3つのカテゴリーで製品を持つ企業を探している。それらはITインフラやデータ管理製品だ。買収はまた、日本を含むグローバル市場での直販セールスの増強、人材の確保、パートナーや販売チャンネルの拡張、などを含んでいる。一連の買収は株式公開、恐らくNASDAQへの上場を2〜3年以内に果たすことを視野に入れながら進めることになる。

DNJ:成長を目指すほど、市場での競合は激しさを増す。中堅CADサプライヤのSolidWorks、Autodeskに加え、ハイエンドCADのDassault Systemes、UGS、PTCなども日本市場への取組みを強め、直接競合する場面が増えるのでは?

競合における優位性

Gascoigne:我々はユニークだ。伝統的な大手との競合、とりわけUGSとCATIAに対しては優位性を感じる。彼らのシステムは比較的古い技術をベースにしているし、自動車産業と航空宇宙産業向けに特化して設計されている。そこが大きな違いを生む。両産業では製品開発サイクルが3年から30年と長く、従って法規的拘束のせいでデータ保持性も長い。この結果、ソフトウェアの構成を組み立てるのに実に多くの拘束を抱えることになる。エレクトロニクス企業にとっては、まず使いにくいシステムであり、さらに不必要に複雑で、ひどく重たくスペースをとる。
 我々のセールスが日々獲得してくる顧客が、もとPTCユーザーであったりUGSユーザーであったりすることが、そのことを証明している。CATIAユーザーはそれほどでもないが。

DNJ:しかしCATIAはマイクロCATIAコンセプトのもとにCATIA PLM Expressのモジュール群構成の投入で、UGSは低価格、早期導入などを特長とするVelocity シリーズの投入で、中小規模のユーザー層開拓にも本腰を入れてきたようだが。

Gascoigne:UGSは一年以上前から上場を期しながら、業績不振からこれを果たせていない。彼らは我々などと競合することにかなり苦戦しているようだ。彼らの言う新製品は新アーキテクチャでも新コンセプトでもなく、従来製品をパッケージし直したに過ぎない。従って、言うほど機能しない。ある特定の製品、Teamcenter Enterpriseなどはパッケージし直すこともできない。Teamcenter Expressの実態はTeamcenter Enterpriseそのものであり、ただユーザーのアクセス領域が制限されているに過ぎない。
 これまでにもCADビジネスの歩みの中では、パッケージし直したに過ぎない派生的な製品が出回った時代があった。「Son of PTC」、「Son of SDRC I−DEAS」などと呼ばれたが、どれも不成功だった。そのなかでしっかりとした意図に基づいて設計された新製品のSolidWorksが投入されると際立った成功を収めた経緯がある。
 大手CAD各社が今日苦闘しているのは、現在のビジネスベース、またメンテナンス商売への影響を恐れて、価格を下げることが出来ないところに理由がある。

3D CAD間の競合

DNJ:3D CADの普及に弾みがつき始めたといっても、日本の機械設計環境では依然2Dユーザーが多数を占める。コクリエイトの代理店筋では、2D CADユーザーに3Dを推奨して、3D採用の意向が固まると、ヒストリベースとノンヒストリベースの違いを説明して選択を促すという手法を取っている。これに対し、最近はヒストリベースのCAD陣営の戦術として、ノンヒストリベースとの違いを際立たせない説得法も登場していると聞くが、競合する3D CAD間での差別化についてはどうか?

Gascoigne:ヒストリ対ノンヒストリの対比が依然として重要で判りやすいことには変わりがない。それによる明らかな利点としては使い勝手の良さ、変更の容易さということになる。さらに忘れてならない利点がある。多くの企業はサプライ・チェーンや中国拠点との連携などで、他社と共同する環境にある。両社のエンジニア間で、どのようにモデルが構成されたかなどを知らずともその上で作業が進行できるようなスムーズさで設計データのやり取りが出来なければならない。10年前ならば、企業は全設計プロセスを自社内に抱えていた。しかしいまや、拘束条件をベースとしない柔軟性に富んだ設計プロセスでなければコラボレイティブ環境で通用しなくなっている。

Leanな製品開発環境

 3D設計は、それに続く3G PLM環境への入り口に過ぎない。3D設計者が創出したデータを有効に活用することを考え、コラボレイティブな設計環境をさらに拡張しようとすれば、設計開発領域から製造領域に連携する。すなわち設計をERPに連携することになる。ここでの接続点がBOM(部品表)だ。さて設計BOMと生産管理BOMとは異なる機能をもつ。コクリエイトにはその設計と生産管理の両BOM間をシームレスにリンクして一致させることのできる先進性がある。この実現を我々は「無駄のない(lean)製品開発環境」と呼び、またこの環境を3GPLMと呼んでいる。
 またウェブシステムアーキテクチャ、リッチマスターモデルが3GPLMに果たす役割の大きさ、今後プロセス・オーケストレーション・ツールをはじめMicrosoftから供給されることになるツールの数々が、差別化を際立たせるだろう。

DNJ:PLM各社が技術や製品ポートフォリオの拡張を進める中で、コクリエイトはどのように対応するか?

Gascoigne:我々はERP事業には進出せず、設計とPLM領域にとどまる。ただしERPとのインターフェースを用意することは自然なことだ。標準品として供給するSAPとの接続インターフェースは、数時間でインストールが可能だ。我々はまた、ERPは企業内の記録システムであるべきで、設計システムと同一にならない、と主張している。
 競合他社はERP企業が設計領域に侵入することを恐れるが、我々はERP企業と共同したいと考えている。

DNJ:PDM(製品データ管理)ソフトに関して、顧客の中にはカスタマイズが容易なことを理由に、新バージョンのModelManagerよりも旧バージョンのWorkManagerのほうを評価する声があるがどうか?

ModelManager新バージョンへの期待

Gascoigne:そのような反応があることは了解している。2年前に、ModelManagerの開発のためにチーム全部を入れ替えた。我々は新プログラミング言語と新アーキテクチャをベースとする新製品のコンセプトを持っていたが、WorkManagerの開発チームは全くそのコンセプトの導入に動かず、ただWorkManagerの書き換えに終始していたからだ。データ管理は柔軟性を持つことはできても決してカスタム製品にはならない。どのデータ管理もがカスタム化されてしまえば、設計グループ内、企業内、サプライ・チェーンとリンクする互換性は失われる。
 ModelManager開発では設計に問題があり、2年近くを費やしてこの改正に取り組んだ。約6ヶ月前には完成したと思ったが、その後も販売は伸びなかった。そこでさらに開発に投資し、その間販売は低迷した。
 しかしようやくWizardの採用を実現することで、柔軟性の問題に解を見出した。これによりユーザーは製品の基本的在りようを変更することなく自由にカスタマイズできる。ModelManagerの販売が07年には最大の成長商品となると期待している。

DNJ:コクリエイトのユーザー会では3次元図面の話題がホットトピックだった。ユーザー会はこの導入に向けて熱心に活動している様子だが?

Gascoigne:開発が進行中で、恐らく12月に次期バージョンとともに出荷開始される。これはコクリエイトにとっても大きな転換点だ。というのもHewlett Packard時代以来の開発コードに変更を加えることになるからだ。
 このほか次期バージョンのOneSpace2007には盛りだくさんの新機能が追加される。その多くの機能は、実は日本の顧客企業が要求してきたものが元になって実現しているという事実をお伝えしたい。
(DNJ聞き手:甲斐真一郎・PHOTO:渡辺二之)



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