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2006年12月

事故ゼロに向かって走れ!


前方設置カメラと画像処理ソフトウエアを用い、車線逸脱警報システムは、意図せずに車線から外れた場合、ドライバーに警告を発する (写真提供:米Delphi社)

路側の情報機器か、あるいは車載のセンサー機能か、自動車メーカーがこのどちらを使おうと、安全上の最終目的が事故の撲滅にあることに変わりはない

著者_Charles J. Murray
     シニア・テクニカル・エディター

 

 ここ10年間以上、自動車の安全性とは衝突対策と同意義だった。エアバッグ、セーフティーケージ構造、クランプル・ゾーン(衝撃吸収帯)などは、事故を予防するのではなく、衝突後の数ミリ秒の間に発生する巨大なエネルギーをどう扱うかに重点が置かれていた。
  いま、これが変わろうとしている。すでにセーフティーケージやクランプル・ゾーンが話題になることはない。自動車メーカーや政府の規制当局は、衝突回避の構想を支持し始めている。エアバッグやテンション自動調節型シートベルトの代わりに、事故ゼロが話題となっている。そう、事故ゼロである。
 「衝突事故での死亡を避けるための一番良い方法は、衝突事故を起こさないことだ、ということに気づいたのだ」と、自動車部品メーカー米Delphi Automotive社の先端総合安全製品のチーフエンジニアであるGlenn Widmann氏は言う。
  「我々はすでに、耐衝突性に関してできることはほぼやり終えている」と、米国運輸省の幹線道路交通安全局(NHTSA:National Highway Traffic Safety Administration)のスポークスマンは言う。「今後は、衝突防止によって人々の命を救うことになる。」
  確かに、衝突防止は自動車業界のホットな話題になっている。米国だけでなく、欧州や日本でも同様である。スウェーデンでは、政府が自動車メーカーSaab社と組んで、衝突事故一掃を狙った“Vision Zero(ビジョン・ゼロ)”というプログラムを進めている。ドイツでは、DaimlerChrysler社が“無事故ドライブ”構想を検討する一方、Siemens VDO Automotive社は“Zero Accidents(事故ゼロ)”と名づけたプログラムを採用している。日本では、事故撲滅を実現するためのスマートハイウェイの下準備を進めているという。
  米国も、これに負けずに大計画を検討している。米国運輸省では、停止標識、交通信号、路側に電子情報機器を設置する構想を研究している。400以上の市街地とそれを結ぶ5万3,000km(3万3,000マイル)におよぶ州間高速道路(インターステート)が対象になる。その一方、自動車メーカーは「安全な繭(コクーン)」を車体上に実現しようという構想を進めている。レーダー、レーザー、視覚システム、超音波センサーを備えた空間である。どちらの構想も基本的に目標は同じである。車両自体が周囲を“観察”して、運転者に警報を出し、極度の緊急事態にはブレーキとハンドル操作も代行するという目標である。
  「衝突事故の95%は防止できると信じている」と、自動車産業界の著名なコンサルタントで、非営利団体CAR(Center for Automotive Research)のDavid Cole会長は言う。「防止できない衝突事故も確かにあるが、現在の交通事故死亡者数を劇的に減少させることは可能である」(Cole会長)。

衝突回避技術を備えた車両は、分散制御の枠組みを採用し、強力な中央処理装置を階層構造の頂点に置く。ABS、エアバッグ、エンジン、および変速モジュールが中央処理装置からの命令を受ける

死亡者数低減のために、いますぐできる3つの方法

 長期的に見ると、先進的センサーとスマートハイウェイが死亡者ゼロのための切り札である。しかし、専門家によると、米国内で毎年43,000名にのぼる死亡者数を削減するためには、既存技術でも大きく貢献できるという。このような方法のうちの3つをあげる。

  1. 横滑り防止装置(ESC)。10年ほど前からある技術で、欧州、特にドイツで普及している。しかし、米国内で販売される自動車のうち、わずか35%しかこの機能を標準装備していない。米国道路安全保険協会(IIHS)の予測によると、この技術により国内で年間10,000人の命が救われるだろうという。
  2. アルコール・イグニッション・インターロック。IIHSはすべてのドライバーにインターロックを推奨しているわけではない。しかし同協会によると、酒気を帯びたドライバーを運転席に乗せないようにするだけで、年間8,000人の命が救われるという。
  3. シートベルト。調査によると、車両占有人員の82%はシートベルトを着用しているという。この数字を100%に増すだけで、年間死亡者数はさらに5,800人減る。

 

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