次はスマートハイウェイの出番
現在、注目を集めている構想は、新スマートハイウェイ計画である。確かに自動車業界では以前にも、スマートハイウェイという言葉があった。8年前、自動車業界と政府が共同して、当時の概念によるスマートハイウェイを実現した。サンディエゴの高速道路の舗装の下にセンサーを埋め込み、車両の集団が隊列通行できるようにしたのだ。しかし、新しい構想はこれとはまったく異なる。既存のインフラを解体する必要はなく、道路工事の必要もない。最終的な実現形態では、道路上のすべての車両が恩恵を受ける。報道によると、米国運輸省は今後5年間で5,000万ドルを投資し、この構想を用いたデモ用の車両部隊を作り上げるという。
基本的に、新スマートハイウェイはパソコンの世界の副産物である。自動車産業には経験が皆無な、電子機器やソフトウエアの会社にも開発がまかされているのはそのせいである。この構想の目玉は専用短距離通信(DSRC:Dedicated Short Range Communication)システムである。このシステムの基本構成は、無線送受信ボードとアンテナおよび関連の配線からなる。連邦通信委員会(FCC)はすでに、この計画の送信周波数帯として5.9GHz帯を割り当て、自動車エンジニアたちはこのシステムのためのソフトとハードの開発を開始した。専門家の予測によると、このようなテクノロジーの搭載コストは、車両一台あたり50ドル以下で済むという。必要なのは、送受信ボードとGPS(全地球測位システム)ユニットおよびマイクロコントローラを追加するだけである。道路側の装置のコストも、同じように最小限でよい。
「この無線デバイスを、交通信号や停止標識や交差点に取り付けて、近づく車両に情報を放送させる」と米General Motors(以下、GM)社の構造安全性統合担当エグゼクティブディレクターのBob Lange氏は言う。「衝突事故の恐れがあるときは、ドライバーに警告を発する。極端な場合には、さらにブレーキやハンドル操作に介入することもできる。」
このシステムにこのような芸当が可能なのは、GPSの利用と送受信ボードの使用のおかげである。送受信ボードにより、自動車は互いに“話す”ことができるようになる。このような車載の電子ユニットが、路側に設置した“本部”を中心に、実質的な無線LAN(ローカルエリアネットワーク)を形成することになる。相互接続で形成されたシステムは、LANへの参加メンバーの人数、位置、速度を知ることにより、路側ユニットに接続したリモート・ソフトウエア・データベースを参照し、潜在的な問題点を予測することができる。
多くのエンジニアによると、このようなシステムが安全性に貢献する可能性はほぼ無限であるという。LANの可能性は大きい。交通信号にさしかかった自動車に対して、ドライバーが赤信号を無視しそうだと警告を発することができる。高速道路の合流路のドライバーにスピードを上げる(あるいは下げる)必要があると知らせることができる。車線変更をする自動車に、死角を走行している自動車があることを警告することができる。衝突が切迫していることや、緊急車両が接近していること、橋梁の高さが低いこと、工事区間であること、一方通行道路であること、さらには道路状態が悪いことまでを警告することができる。
計画推進者によると、このシステムの利点は、自治体が道路をはがして工事する必要がないということにあるという。陳腐化のリスクもない。電子回路がアスファルトの下に埋まっているわけではないからである。むしろ、エレクトロニクス技術の絶え間ない進歩に基づいて、電子業界のソフトウエアエンジニアの専門能力を活用する。さまざまな潜在的な事故のシナリオを記述するために、ソフトウエアエンジニアは大量のプログラムコードを作成する必要がある。
「事故防止へと大きな一歩を本気で踏み出すつもりならば、技術的な方程式のなかには、ハイウェイという因子を入れておく必要がある」とCARのCole会長は言う。「自動車とハイウェイを統合という全体構想はすばらしいものだ。いま実現への出発点に立っている。」
ChevroletのAveoのような低価格帯の自動車では、スマートハイウェイのインフラの活用にメリットがある。車載の衝突回避システムなどの高価なものは、車両の値段からみて採用できないからだ
次世代のセンサー
次世代の安全システムの要求を満たすために、自動車部品メーカーは新種のセンサーを製品展開している。その範囲は、レーザーから始まり、レーダーやジャイロスコープに及ぶ。
 |
米TRW社の77GHzレーダーセンサーは200m先までのデータを収集する。同社の受動的走行制御システムにはこのレーダーが使用され、前方に遅い車が現れた時には、自動的にブレーキをかける。 |
 |
独Bosch Automotive社のMEMS技術で製造されたDRS MM3ジャイロスコープ・センサーは、角速度の検知によって、横滑り防止(ESC)、横転防止、およびアクティブステアリングを実現する。 |
 |
米Sick Optic社のLMS 291レーザーセンサーは、賞金200万ドル勝者独り占め方式、DARPA主催の自律走行車レース、Grand Challengeの優勝車両で用いられた。車両前方の地形を3次元画像として“描く”ことができる。 |
横滑り防止装置への追い風
現在使用中の自動車に横滑り防止装置がついていなくても、もうすぐつけるようになるだろう。General Motors社は、2010年までに同社の新型車はすべて、同社の横滑り防止ブランドであるStabiliTrakを組み込むと発表した。さらにNHTSAはこの秋にも、横滑り防止技術に関連して、ルール設定に関する公示(Notice of Proposed Rulemaking)を行うと見られている。最終的にこの技術は、米国内で販売されるすべての車両で、今後3〜4年間の時点で義務化される見込みだ。
横滑り防止装置のメリットは、運転初心者でも専門家のような運転を可能にすることである。ESCのヨーレートセンサーが横滑りを検知し、ABSユニットに警告を伝える。正しい車輪にブレーキをかけることによって、ABSモジュールが横滑りを止める。
「車両を走行状態に保つことは、横転事故を低減するための基本である」と、Bosch Automotive社の、横滑り防止装置の製造部門Chassis Divisionのマーケティングマネジャー、Paul Mercurio氏は言う。「横滑り防止装置のメリットは、これによってドライバーが常に走行状態に保たれることだ」(同氏)。
大部分の自動車では、ESCによる値段の上昇は300ドルから800ドルの間である。ヨーレートセンサーとステアリング角センサーを組み込み、ABSユニットをアップグレードする必要がある。大部分のABSユニットでは、ポンプからの吸排流量制御用の油圧弁を4個追加する必要がある。電子制御装置とソフトウエアも追加しなければならない。
安全対策としてのESCは、自動車メーカーの希望的観測をもはるかに上回る、すばらしい性能を発揮した。米国道路安全保険協会(IIHS)が今年初めに公表した調査報告によると、横すべり防止装置は年間1万人の命を救うことができるだろうとされている。「どんな自動車でも横転事故の可能性がある」とMercurio氏は言う。「Ferrari(フェラーリ)を運転しようがSUVであろうが同じだ。つまずけば、ひっくり返る。」