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2006年12月

事故ゼロに向かって走れ!


車載の情報機器

 運輸省が自動車と幹線道路を統合するという構想を研究している一方では、ティア1サプライヤ(モジュール・サプライヤ)は別の計画を考案している。車両に情報機器を搭載して事故死亡者数を軽減する計画である。DRSCシステムとは違い、車両周辺の状況を感知するために道路側との通信に頼るのではなく、車載機器によって車両がすべての方向を“見る”ことができるようにして、状況にかんするインフォームド・デシジョン(詳細な情報を得た上での決定)を実行する。
  このようなシステムには、すでに入手できるものもある。ESC(横滑り防止装置、Electronic Stability Control)はヨーセンサーとアンチロックブレーキを組み合わせて横滑りを止める手法である。ESCは、死亡事故削減のための最も効果的な方法のひとつであると認められている(囲み記事「横滑り防止装置への追い風」を参照)。6月に、米国道路安全保険協会(IIHS:Insurance Institute for Highway Safety)は、ESCを全面的に採用すれば、米国内の年間死亡者数を1万人削減することができるという予測を発表した。
  しかし、事故ゼロの水準に達するための努力には、より徹底した方策が求められる。部品メーカーと自動車メーカーは共同歩調を取り、基礎研究を進め、段階的な計画を立てている。この計画によると、まず受動的な走行制御から始め、自律型車線維持に移り、最後に衝突回避に達する。これらのテクノロジーすべてにおいて、最新のセンサーを使う必要がある。例えば、米TRW Automotive社が製品化したアダプティブ・クルーズコントロール・システムでは、77GHzの長距離レーダーセンサーが採用されている。
  自動車メーカーにとって、このようなシステムを搭載する上での課題は、レーダー、レーザー、ビデオ、ヨーレートセンサー、およびGPSユニットから発する大量のデータを融合することである。
  「明白なことは、データ融合が進むにしたがって、必要な計算量が増大するということだ」と、TRW Chassis Systems社の製品企画担当ディレクター、Phil Cunningham氏は言う。
  確かに、エンジニアは計算のジレンマに直面している。センサーからのデータの量的拡大だけではなく、その複雑性が原因である。データの意味を理解するために、センサーからの入力を統合して、ソフトウエアモデルを作り出し、外部環境の“包括的”写像を生成するのが自動車メーカーの目標である。
  これは重要な点である、と専門家は指摘する。衝突を避けるために自動車が自ら操舵できるようにするには、自動車は周辺のすべての事情を知っていなければならないからである。これを守れば、ハンドル操作でひとつの衝突事故を避けても、別のさらにひどい衝突事故へ突っ込んでしまうという事態を避けられるからである。
  このため、車両上の情報処理システムは階層構造パターンに進化するだろう。階層の最上部には強力な中央処理装置があり、パワートレイン、車台、インフォテインメント、社内電源システムなどからの情報を管理する。典型的な中央処理装置は、PowerPC型のマイクロプロセッサ4〜5台のクラスターを採用し、サブシステムからの“前処理された”データを検査する。
  「ナビゲーションシステムからの情報で、前方にカーブがあることを知り、変速装置にシフトダウンを命令する、というようなことができるようになる」と、Freescale Semiconductor社のTransportation and Standard Products Group(運輸および標準部品部門)の戦略マーケティング担当ディレクター、Peter Schulmeyer氏は言う。「これは、ナビゲーションシステムを置き換えるものではなく、変速制御装置を置き換えるものでもない。むしろ、その上に情報処理を1層付け加えるものだ」(同氏)。
  階層構造の中で、サブシステム層がABS、エアバッグ、エンジンおよびトランスミッションを制御し、中央処理装置からの命令を実行する。この下の層では、マイクロコントローラ付きのエアバッグ、視覚システムおよびナビゲーションシステム用センサーがデータ収集を行う。
  「いま有るものとはかなり違う処理方法が必要になるだろう」とSchulmeyer氏は説明する。「レーダーシステムや視覚システムでは大量の計算処理が発生するだろう。しかし、判定は中央処理装置でおこなわれる」(Schulmeyer氏)。

Delphi Automotive社の事前警報スマートクルーズコントロールは、フロントバンパー裏側のレーダーセンサーを使用して、たとえ前方車両が減速しても、前方車両からの安全距離を保持する

コストの問題

 自動車メーカーが、スマートハイウェイと車載情報処理のどちらを選択するかという問題は、コストに依存する。レーザー、視覚センサー、レーダーなどの高価なセンサー群を備える余裕が、低価格帯の自動車にあるとは思えないと見る人は多い。逆に、中位から高価格帯の自動車の多くは、このようなテクノロジーを採用するだろうと信じる人が大多数を占める。
  「車両周り360度をカバーするためには、10個、11個あるいは12個のセンサーと、それからの入力を処理するために、追加のCPU(中央処理装置)を搭載する必要がある」とGM社のLange氏は言う。「センサーの統合がいくら効果的だといっても、低価格帯のChevrolet Aveoに、このような10ドルのセンサーが多数備え付けられるような状況は考えにくい。」
  しかしLange氏は、自動車メーカーは高価格帯の車種にはこのテクノロジーを採用するだろうと言う。「これはかならず起こる。当社も、Ford社も、DaimlerChrysler社も、トヨタもこの種のテクノロジーを開発している。」
  専門家の意見では、どちらの方法を使うにせよ、現在の死亡事故の大半は防止できるという。同じ理由から、NHTSAはこの秋にも基準を引き上げ、ルール設定に関する公示(Notice of Proposed Rulemaking)を行い、横滑り防止の類のテクノロジーを、米国内で今後3年間に義務化しようとしている。その一方で、メーカー12社によるコンソーシアムは、DSRCによるスマートハイウェイのためのソフトウエアモデルである、安全関連の“ユース・ケース”を開発している。
  「死亡者ゼロを達成することを期待するのは現実的ではない。今後20年かかっても無理だろう」と米国道路安全保険協会(IIHS)のAdrian Lund会長は指摘する。「しかし、いつの日か、すべての死亡事故が予防できるようになるということを認識することが重要なのだ。事故がどうやって起こるのかを理解し、その上で予防対策を講じることが必要だ」(Lund会長)。

スマートハイウェイは
どのようにドライバーを支援するのか

潜在的事故のシナリオを集めた巨大なデータベースの助けを借りて、スマートハイウェイは、さまざまな事故の可能性をドライバーに警告する。いくつかの事例はつぎのとおり
■ 交通信号無視の警告:ドライバーが赤信号無視をすることを予測する。
■ 左折支援:ドライバーがいつ左折して対抗車線に入ったらいいのか、いつはダメなのかの決定を助ける。
■交差点での衝突警報:交差する道路の通行車両との衝突が切迫していると、ドライバーに警告を発する。最終的な実用化の形では、システムはブレーキ制御を行い、事故を防止する。
■ 緊急車両接近警告:近づいてくる緊急車両の速度、場所、車線情報、および予定経路を含んだメッセージを放送する。
■ 低橋りょう警報:商用車に対して、低くて通り抜けが危険な橋りょうの警告を発する。

 

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