ハイエンド3D CADの新展開
3Dを使いこなすための2D取り込み
ダッソー・システムズ
小林力マネージャー
現在約150のモジュールをもつDassault Systemes(DS)のCATIAは、PLMの実現をテーマに開発を進めているが、将来的には「リアリスティック・シミュレーション」をターゲットに開発する計画だ。これは物理現象を現実に近い形で設計者の端末で実現することを意味している。
ダッソー・システムズ、CATIA PLMチャネル アジアの小林力日本地区マネージャーによれば、3Dの先進的ユーザーはその先進性をさらに推し進めてデジタル・エンジニアリングのメリットを追及し続ける一方、その提携先や周辺の協力会社では、3D活用に向けていくつかの問題が顕在化している。例えば、3D設計は2Dと比較して時間がかかる。またいくつかの代案を検討したいときに3Dは厳密な定義を要求するため柔軟性に乏しい。さらにフィーチャー・パラメトリックモデルの本質的特性でもあるモデル履歴の問題が、設計の再利用を阻害する要因として意識されるようになった、などだ。
ダッソー・システムズ
池野上一郎シニアアプリ
ケーションスペシャリスト
CATIAの開発においては、ブレイクスルー技術、コラボレーションPLMなどを追求しながら、ユーザー環境で3Dをフルに活用する際の障害となる問題の解消のためにも開発力を投入している。
最新のCATIAの開発製品のなかで、人のイメージ・構想をかたちにする領域では、意匠設計(IMA)、構想レイアウト設計(LO1)、詳細設計(FMP)、の3つの特徴的な製品がある。イマジン&シェイプ2(IMA)では、従来のサーフェイス・モデリング手法のほかに、サブディビジョン・サーフェイスという新技術を導入して、粘度細工のように形状を捏ねながら作業できるのが特徴だ。直感的に3次元のアイデアを形状化し試行錯誤できるこのツールによって、意匠設計者はスタイリングの自由度を高め、かつスピーディに高品位のサーフェイスを多数生み出すことが可能になる。またこれによって、効率的にオプション検討を進行することが可能となり、検討、評価、承認を目的とする物理的モックアップの点数を減らすことができる。
小林マネージャーは「IMAがCATIAに入っていることのメリットのひとつは、意匠設計と機械設計のコラボレーションが同一のプラットフォーム、画面上で同時進行できるところにある」と紹介する。
3Dを強力に推進するDSといえども2Dの設計習慣を黙過できない。ダッソー・システムズ、CATIA PLMチャネル アジア 池野上一郎シニアアプリケーションスペシャリストは「図面にしても、3Dモデルにしても、設計の成果物は単に加工するための形状情報だけでなく、その形状の根拠となる定義自体を読み取れる必要がある。3Dモデルでは結果は非常に分かりやすいが、どう定義されているかが分かりにくい」と指摘。そこで「2D レイアウト for 3D デザイン(LO1)」の導入で、3D設計を十分に使い切るための2D設計機能を開発した。
主な機能としては、作図機能としてCATIA V5のドラフティング描画機能を3D環境でほぼすべて利用できるだけでなく、各種フォーマットに対応した過去の図面資産を3D側に取り込める。またLO1で描いた2D形状を3Dモデリングできる。すなわち「3Dモデリングの完了の後に2D図面に仕上げるのではなく、2Dで考えながら描きはじめた形状の結果を3D化できる」(池野上氏)。また正面図、側面図など2Dビューの先に見えている参照3D形状を透過表示することができる。加えて、3D形状に見せるだけでなく、これから設計に必要な部分だけを選択表示することを可能にするフィルター機能、3D背景の表示エリアと深さを限定するクリッピング機能を備える。
印刷・図面作成では、LO1で作成した2D要素を、参照透過表示される3D要素と同時に一括印刷できる。さらに両要素をCATIA V5のCATDrawing図面形式に変換でき、図面化したあとに、LO1で変更を加えた場合には、図面の方も追従する。また必要に応じて履歴を切ることも可能で、履歴を切った時点での図面を保存することも可能だ。
スケーラビリティを市場展開
PTCジャパン
板内美子ディレクター
PTCジャパン営業技術部の河村智人テクニカルマネージャーは、3D CADのPro/ENGINEERを営業推進する立場から、「現場では、まだまだ2D図面のユーザーベースがある。ただし市場では2Dから3Dへの切り替えの勢いは一服した感がある。他方、先進的な企業はすでに3Dへの取組みを本格化している。3Dユーザーのなかでは、低価格で取り付きやすい3D CADを採用したユーザーの中から、自由局面作成や大規模アセンブリの対応力への要求が強まって、3Dのステップアップを計画する企業が増えてきている」と語る。
「CAD化はすでに導入期を過ぎて市場に浸透し、製品としてはある種の成熟期を迎えている。このため各メーカーのCADを機能対機能で比較する動きは市場でも減ってきた。どのCADにも、機能はゴマンと入りすぎるほど豊富だ」と語るのは、PTCジャパンマーケティングの板内美子ディレクター。「PTCとしてはCAD単体での訴求ではなく、PDS(Product Development System)を押し出している。CADはPDSの構想図のなかの一部として、その成果物のデータ管理、設計のコラボレーション、買収したArbortext のダイナミック・パブリッシングとも連携する」と説明する。
PTCジャパン 河村智人テ
クニカルマネージャー
数年来、PTCはグローバルベースで同社のPLMソリューションWindchillを強力推進してきた。この路線を継承する一方で、日本市場では今年度から、同社事業のスタートの商品でもあるPro/ENGINEERを再度明確に市場に伝える活動を開始している。
坂内ディレクターは「PTCはミッドレンジとハイエンドを分けずに3DハイエンドPro/ENGINEERの1製品ということで通してきた。しかしその製品自体はスケーラブルで、ミッドレンジのInventorやSolidWorksの価格帯に匹敵するPro/ENGINEERの最小基本パッケージとしてFoundation(Advantage)という製品を供給できる。その製品構成を市場にしっかり伝えたい」と語る。
FoundationはミッドレンジCAD市場がターゲットとなるが「豊富な人材を期待できない中小事業者だからこそITツールに先進性を求め、Pro/ENGINEERの導入で開発製品の差別化につなげようとする事業オーナーもいる」と坂内ディレクター。
Pro/ENGINEER上で組み付け条件をマウスでコントロール
Pro/ENGINEERにも2D CADの3投影図を利用して3Dの立体を起こすツールは最小基本パッケージに含まれる。しかし3面図が表現できる以上の指図、断面図は3Dでは実現できない。ただしこのautobuilds機能では、3面図から起こした立体モデルがパラメトリック構造を持っている点が他社にない特徴となっている。このため、後からサイズ変更など編集ができる。また同機能では部品を分けてアセンブルすることも可能だ。
操作性の改善も進めてきた。従来のPro/ENGINEERは性能に優れるが取り付きにくい、というイメージを払拭し、マウスのカーソルの移動距離やメニューのピック数など操作性の面で大きく改善して投入したのがPro/E WildFireだった。「WildFireの導入は、Pro/ENGINEERの操作イメージを転換し改善するのに成功している」と河村マネージャーは語る。大手自動車メーカーのWildFire2.0の採用をきっかけに、市場が拡大した。