ハイテン材(高強度鋼材)の活用に道
その名の通り、ハイテン材(AHSS:Advanced High Strength Steel)には有用な引張特性がある。550MPaを越える降伏応力もその一つ。しかし、この鋼材を溶接するにはある特殊処理が必要になることがある。米Ford Motor社(以下、フォード)の車体構造研究者で2006年の「Great Designs in Steel Seminar」でのプレゼンターであるAdrian Elliott氏によれば、「AHSSは熱に敏感だ」という。米国鉄鋼協会(AISI:American Iron and Steel Institute)が主催する同セミナーでは、AHSSに適した溶接技術、接合技術の数々が紹介された。
撹拌する
航空宇宙用途ではアルミニウムを接合する方法として摩擦撹拌接合(FSW:Friction Stir Welding)が注目されつつある。この固体での加工には、工具が接合部を通って移動する間、絶え間なく溶接するのに十分な局部的な熱と圧力を発生させるための回転円筒工具が欠かせない。同セミナーにて、2つの米国国立研究所所属のTsung-Yu Pan氏と共著者はAHSSの利用が期待できるFSWのバリエーションを紹介した。摩擦撹拌スポット接合(FSSW:Friction Stir Spot Welding)は、直線状の溶接線ではなく、スポット接合部を作る。2003年からすでにアルミニウム部品製造で利用され、成果が実証されている。Pan氏は発表で、AHSSにも適合する可能性を示唆した。急速に普及しているAHSSであるDP 780に関する研究では、FSSWによってJIS規格に適合する強度8〜12kNのスポット接合を実現したとしている。接合部分には、ベースの鋼材と類似したミクロ構造と硬度が得られた。こうした利点はすべて、鋼材や工程の最適化に努めることなく実現できる。Pan氏の発表内容はhttp://rbi.ims.ca/4935-549にてダウンロード可能。
GMAW(ガスメタルアーク溶接)を機能させる
AHSSにガスメタルアーク溶接(GMAW:Gas Metal Arc Welding)を用いるにはいくつかの技術的な問題がある。AHSSはGMAWの入熱に敏感で、微細構造の変化や機械的性質の低下が生じる恐れがある。これはAHSSの強度によって実現可能となった規格より薄い板材では、より性能を低下させてしまうやっかいな問題である。同セミナーでの発表で、フォードのElliott氏は同社のGMAW工程の変数と溶接ライン設計の最適化を目指した取り組みをいくつか紹介した。例えば、3.4mmのAHSS(DP 600)と3.8mmの軟鋼の間の重ね溶接接合部の耐用年数を伸ばす多数の変数を特定した。こうした変数の組み合わせには、トーチ角度、前進角、接点からワークまでの距離を増加させながら、一方でワイヤ送り速度と走行速度を低下させるというようなものがある。このようなElliott氏の研究の全容についてはhttp://rbi.ims.ca/4935-551を参照のこと。
エポキシ接合
米Dow Automotive社のエンジニアであるMansour Mirdamadi氏の論文によれば、鉄骨構造を接着接合するとその構造がより強化される場合があるという。Dow社の化学者は、同社の破壊靭性を有する一液型エポキシ接着剤をAHSSとの使用に合わせ最適化した。このクラスでは最高性能を誇るこの接着剤は通常、接着剛性が1,000MPa以上で広い温度範囲(−40から80℃)において衝撃耐性を維持する。Mirdamadi氏は発表の中で、IIHSテストにおいてミニバンの横からの衝突に対する性能向上を図る上で、構造用接着剤が果たす役割についての調査研究を紹介した。研究の結果、接着材で接着されたBピラー構造では、溶接補強用に接着剤を使用していない標準設計に比べ、侵入量が5.4ミリ向上したことが分かった。同論文で同氏は、破壊靭性のある接着剤が車体剛性と動作音(NVH)の改善に大きく貢献することを示した。Mirdamadi氏の発表内容は
http://rbi.ims.ca/4935-550にてダウンロード可能。