著者_Kenneth Russell氏
米マサチューセッツ工科大学 名誉教授
アメリカでは莫大な数のゴムタイヤを使った輸送が行われている。それぞれのタイヤには金属製のリムが取り付けられており、その製品寿命の間にはおそらく何十億回も回転することになる。回転する間中、リムにかかる応力は引っ張りと圧縮を繰り返し、金属疲労として知られる進行性の不具合現象を引き起こす。
犯行現場の状況
この訴訟では、あるトラックのリムが、その外側フランジがリムの中央部に結合する部分で割れていた。長さ533mm(21インチ)の割れとこれよりも小さい多くのクラックがあった。インナーチューブがこの長い割れを通ってふくらんで破裂し、事故を招いた。リムの割れにつながるような事故による損傷の痕跡やその他の外傷はなかった。私はこの破裂の原因となったのはどのような損傷のせいであるかについて、何も伝えられていなかったが、単なる損害であることを疑った。
捜査内容
私はリムメーカーに請われて、材料または作業の欠陥のどちらがこの早期のリムの不具合を招いたかについて検討した。リムの断面を分光分析、硬度試験、光学的な金属組成手法および走査電子顕微鏡に使用した。試験の結果、リムは通常の低炭素鋼であり、板材から冷間加工してリムの形状にしたものであることがわかった。これはすべて、一般的なリム業界の慣例に一致したものであった。
破断面に電子顕微鏡を走査させて調査したところ、疲労破壊の特徴であるストライエーションが見られた。ストライエーションはわずか2.54nm(100万分の1インチ)しか間隔がないほどの微細なものであり、何百万回ものストレスサイクルの後にしか発生しない(ストライエーションの画像についてはhttp://rbi.ims.ca/5381-650を参照)。破壊は通常、リムの断面がフランジ状から中央リム部に変わる周辺部で発生する。フランジにかかる曲げモーメントによって応力が最大になる個所に不具合が発生すると予測される。破断面はジグザグに前後しており、多数、おそらくは数十の疲労クラックの発生源があった。破断面全体の電子顕微鏡写真はhttp://rbi.ims.ca/5381-651から入手可能である。
疲労はいわゆる応力増加因子をきっかけにして発生する。この因子はしばしば、製造時にできた表面のぎざぎざやクラックである。クラックはこの応力増加因子をきっかけに広がり始め、繰り返し荷重によって少しずつ広がっていく。最終的には部材が弱くなり、かかっている応力を支えられなくなって急に破壊が発生する。
動かぬ証拠
今回の場合、“決定的な証拠”はなかった。早期破壊につながるような機械加工のえぐれや製造時のクラックはなかったのである。リムに過大な荷重がかかったので、表面にある十数個以上の微小な加工マークやその他の不整部を起点にクラックが発生した。こういった不整は実世界では不可避である。
私の調査では、このリムメーカーは健全な操業状態であった。リムは業界の標準どおりに製造されており欠陥はなかった。破壊は過荷重によるものであり、これはリムを使用する者の過ちであった。法廷に立って自説を主張することは容易に違いなかった。だが、そうはならなかった。
法律家たちと技術者たちでは全く異なる考えを持っており、外部専門家の証言を出すのにも詳細な準備が絶対に必要だった。通常、私の弁護士、クライアントそして私は、数時間から数日をかけて、私の調査とその意味することをやりとりすることになる。そして私が直接の証人になり、弁護士が私に、私の調査内容とそれから私が導いた結論について尋問する。私の調査結果は尋問の回答としてだけ示される。
私は不満の溜まる数時間を証言台で過ごしたが、自説を述べることが可能な尋問をされることはなかった。弁護士が、必要な尋問項目を用意していなかったのだ。彼と私は前日の夕方、私の調査を検討するべきだったのであるが、そうはしなかった。その代わりにこの離婚歴のある弁護士は、前日の晩をめったに会うことがない青年期の息子と過ごしたのである。
法廷は私のクライアントに不利な判決を下したが、それは驚くべきことではなかった。しかし、この会社の社長はこの判決に関して私を非難しなかった。彼は経験ある技術者で、なぜ私が証人席で立ち往生しているのか訳を知っていたからである。