David Hanson氏のヒト型ロボットは満面の笑みを浮かべることができる。インテリジェントなモーションコントロールシステムが、顔にリアルな表情をもたらすからだ。
著者_Joseph Ogando
モーションコントロール担当
シニアエディター
写真_Erica Lansner
Hanson氏の知的ロボットのなかで最も有名なもののひとつが、このアインシュタインの頭部である。ここでは似合っているとは言い難い二足歩行ロボットのボディの上に設置されている
David Hanson氏は、ほかのロボット開発者が決してしないような冒険をしている。Hanson氏が作り出すロボットの顔は、実際のヒトの顔の外観と動作を模倣しているのだ。一見それほど画期的なアイデアではないようだが、これは実は革新的なことである。
ヒト型ロボットの多くは、人工知能を有し、ヒトと同じような動作を行う能力を備えているが、顔のつくりと表情は抽象的で似せようとしていない。この理由のひとつに、ロボット開発者の間で、ヒトの顔の特徴をリアルに再現すると不気味に見えると広く信じられていることが挙げられる。「これはまったく誤った考え方だ。表情や身振りに引きつけられるのは自然なことなのだ」と米Hanson Robotics社の社長Hanson氏は言う。
もうひとつの理由は、技術的な難しさである。発声機能や、マシンビジョンからの信号に反応して、ヒトの顔の48個の主要筋肉群のシミュレーションを的確に行うための、人工知能(AI)制御のモーションコントロールシステムを構築することは、技術的にかなりの課題である。「正しい表情をするだけではなく、適切な時に適切な表情を見せる必要もある」(Hanson氏)。たとえば、アイコンタクトに基づいた表情をリアルに見せるためには、3分の1秒以内に表情を作る必要がある。
Hanson氏は、上述の2つの問題を解決するために“芸術性とエンジニアリングの組み合わせ”を用いてきたという。ちなみに、同氏はロードアイランド美術大学(Rhode Island School of Design)で美術を学び、テキサス大学(University of Texas)で芸術と工学の融合分野の博士号を取得している。
芸術性については理解しやすい。Hanson氏のロボットの中でも、アルバート・アインシュタインとSF作家フィリップ・K・ディックの頭部の複製はよく知られている。同氏のロボットの頭部は、何千種類もの、人間そっくりな微妙な表情を表現することができる。「多くの開発者は、ロボットがあまりにヒトらしく見えるのを意図的に避けてきた。しかしDavidは、顔の細部へ注意を払うことで、ヒトらしさを達成したのだ」と、Aaron Edsinger氏は言う。Edsinger氏はマサチューセッツ工科大学(MIT)の情報工学人工知能研究所の研究員であり、ヒト型ロボット作成者のひとりでもある。