CoroWare社のRobotics PlusPackは、Microsoft Robotics Studioの機能を拡張するアプリケーション、サービス、ツール、アセット/ユーティリティクラスで構成されている。この中には、ここに示す “surveyor”ロボットのようなシミュレーション・コンポーネントも数多く含まれている
米Microsoft(マイクロソフト)社がWindowsベースのロボティクス・ソフトウエア開発キットをリリースした。Microsoft Robotics Studio(MSRS)と呼ばれるこのキットは、ビジュアル・ロボット・プログラミング言語、3Dシミュレーション・ツール、サービス指向ランタイム・アーキテクチャで構成されている。簡単な娯楽用のモデルから複雑な産業用ロボットにいたる様々な種類のロボットを開発できる汎用ソフトウエア開発プラットホームだ。「この開発キットはどのようなシチュエーションにも対応できる」と、同社ロボティクス・グループのゼネラル・マネジャー、Tandy Trower氏は言う。「ユーザーがどのような学習段階にあろうとも、あるいはどのようなハードウエアを使っていようとも、同じプログラミング・モデルで作業できるようになる。」
これは、今までハードウエア、オペレーティング・システム、プログラミング環境によって分断されてきたロボティクスの世界では大きな前進である。「これまでデベロッパーは自社の開発環境を構築しなくてはならなかった」と、ロボティクス分野のシステム・インテグレータであり、MSRSでマイクロソフト社と提携している米CoroWare社のLloyd Spencer社長は言う。MSRSがあれば、組織の規模に関係なくどのようなデベロッパーも、新しいロボットアプリケーションに取り組むたびに土台から作り直す必要がなくなる、と同氏は主張する。視覚誘導ロボティクス・ソフトウエアのサプライヤ、カナダBraintech社CEOのOwen Jones氏は次のように言う。「現在、ほぼすべてのアプリケーションが一から開発されている。Robotics Studioを使えばその必要はなくなる。」
Microsoft Robotics Studio には、ロボット・プログラミングの難しさを軽減できる視覚的なプログラミング言語が含まれている
MSRSには、民生用ロボットやサービス・ロボットの開発期間を短縮できる可能性があるのではないかという期待が寄せられている。Jones氏は、マイクロソフト社のオペレーティング・システムがパソコンにもたらしたことと同じことが、MSRSとロボットの間に起こるだろうと予測している。「このソフトウエアが民生向けロボットの世界に革命をもたらすと信じている」(Jones氏)。「愛好家から起業家、大企業のR&Dスタッフにいたる誰もが、同じ言語を用いてロボティクス・アプリケーションを開発できるようになる。」
MSRSには産業用途の目的もある。MSRSに採用されているサービス指向アーキテクチャは、そもそもが産業アプリケーションでよく見られる分散処理をサポートするものだ。MSRSを開発したマイクロソフト社のソフトウエア・アーキテクトの一人、George Chrysanthakopoulos氏は、重要な位置制御ループの実行などではMSRSが既存の産業用ロボット・コントローラに置き換わることはないだろうが、「低周波数のロジック」ならばMSRSを使って簡単にPCに分散できるだろうと語る。同氏によれば、サービス・ベースのシステムでは最大10万メッセージ/秒を処理できるのに対し、典型的なロボット・アプリケーションには約60メッセージ/秒/軸が必要とされる。
MSRSによって訓練やシミュレーションが容易になる。米Ageia Technologies社の物理演算エンジンが搭載されているので、3Dシミュレーションではモーションだけでなく、それに関連する負荷、力、加速度も考慮される。
このロボティクス・プロジェクトで現在までにマイクロソフト社と提携している30社のうちの数社は、産業用ロボットや関連システムのサプライヤである。たとえばBraintech社は、産業用ロボット向けの視覚誘導技術を提供している。同社はVOLTS-IQという商標でMSRSソフトウエアサービスパッケージを発売した。このパッケージにより、形状認識、物体の位置付け、ロボット誘導が可能になる。もう一つの例としては独Kuka Robotics社がある。同社マーケティング・ディレクターであるKevin Kozuszek氏によれば、同社ではMSRSを教育・トレーニングツールとして見ているという。将来的には完成したロボティクス・ソフトウエアをMSRSからKuka社のPCベースのコントローラに転送できるようになるだろう。
Microsoft Robotics Studioは現在、アマチュア愛好家、学生、学術機関向けには無料でライセンス供与されている。民間のロボット・デベロッパーは、最低価格399ドルから開発プラットホームのライセンスを取得できる。
(Joseph Ogando、モーションコントロール担当シニア・エディター)