図1 ベンダーごとに異なるデータ管理が現在のPLM環境を特徴づける。(日本IBM)
SOAベースにPDIFを構築
局所最適のシステムから、エンタープライズベースの全体最適化へ、さらに企業全体の意思決定能力を向上させ、戦略的なビジネス・プロセスへと向上させようとする企業ニーズを見越して、IBMはPDIF(Product Development Integration Framework)を発表した。これは平たく言えば「PDM/PLMの業界で、相互につなぐための標準を業界で作りませんかと言う提案」(大村亮介担当)。
統合化していくために、アプリケーションの結合度を低くするための部品化(Modularity)を実現する最新技術がIBMのSOA(Service Oriented Architecture)で、PDIFはこのSOAアーキテクチャーを最大限に活用する。SOAはアプリケーション間をポイント・ツー・ポイントや中央のハブを介して結合するのでなく、「粗粒度・疎結合のサービス群として」構築する。
サービス群を統合して割り付けるのは、Enterprise Service Bus(ESB)で、全体は標準的なインターフェースで定義された柔軟な結合性を保つ。SOAはこのESB連結により、企業の組織変更、業務プロセスの変更、情報技術の変更に柔軟な対応を実現しようとする。
同社によれば、このPDIFによる企業内システム連携(Enterprise Integration)が実現すれば、製造、購買、SCM、財務、ERP、CRMを含む、企業全体にわたる製品開発データやIPにリンクすることにより、統合的なビジネス基盤が確立する。(図2)
図2 PDIFが企業内システムを連携可能とし、様々なアプリとの統合を実現。(日本IBM)
例えば、ESBに接続している異種ベンダーの複数のシステムから必要なデータを収集したり、仮想的にひとつの大きなデータベースからデータを抽出するかのように、各個別の専門アプリケーションから同じ切り口のデータを収集したり、また複数のシステムから収集し加工したデータをポータルでビジュアル化させたり全く別システムへ登録するなどが想定される。
PDIFの統合プロセスには、第一段階Connect、第二段階Virtualize、第三段階Manageの3段階が想定される。第一段階で様々なベンダーのシステムをポイント・ツー・ポイントでESBにアダプタを介して接続する形で統合する。第二段階では〈フェデレーション〉という複数の独立したシステム間で、統制をかけて特定のルールを持って使えるようにする。この段階では例えばIBM WorkplaceとDSの3D XMLテクノロジーの統合、あるいは、問題のリストと3D形状を同一画面上に表示するエンジニアリング・ポータルなどが実現する。
第三段階になると、機械設計、電気的設計、組み込み型ソフトウエア設計の「複雑な統合」を管理して、例えばブレーキやエンジン制御がメカ・エレキ・ソフトの統合システムとして動作するシミュレーションを実現するような〈Systems Engineering〉を可能にする。この段階では、ESBに接続している複数のシステムをひとつの大きなシステムと見立て、要件に対してプロセスに沿って各システムで必要な機能を横断的に実行し、最終的なアウトプットを得るようになる。
IBMはSysMLというモデリング言語を使用し、部分最適化された各アプリケーションを統一したシステムのモデルとして記述する手法を研究している。各コンポーネント間の相互関係を明確にした上で、要件に基づいたプロセスを各アプリケーションに対して実行する。
IBMのPDIFに参加するプロバイダーは、DSに加え、新たにアジャイル・ソフトウェア、セントリック・ソフトウェア、エンジニアス・ソフトウェア、ジオメトリック・ソフトウェア・ソリューションズ、MSCソフトウェア、プロステップ、PTC、UGSの各社が名を連ねている。IBMは今後これらの企業とESBアダプタの開発などで共同する。
土生事業部長は「PDMの世界がエンド・ツー・エンドで全てのアプリケーションを接続できない状況では業界の標準化が必須になる。IBMはSOAベースのPDIFコンセプトで、異なるベンダー間の標準化作りのリーダーになり、真の意味でのPLMの提供を目指している」と狙いを語る。
PDIFはユーザーには理想形だが導入までには時間がかかる。そのため「親和性という意味では当面、CATIA、 ENOVIA、DELMIAでのインテグレーションが一番といえる。しかし他社のPDM、CADとの統合の要望が顧客からあれば、サービス部門が中心になって、統合ソリューション開発に努めることになる」と土生事業部長。また「アプリケーション領域ではIBMはDS製品をメインにしていくことは今後も変わらないだろう。ただ、ミドルウエアの領域では、賛同いただけるベンダーに幅広く開放していきたい。それによってIT業界全体が標準化、効率化される」と語る。
(担当:甲斐真一郎)