前号では、3次元設計の普及の中で、設計情報は媒体、つまり存在の安定度を失う結果を招いた。その原因の主たるところは3次元CADシステムによる設計情報の3次元出力化への配慮の欠如と、これを明確に改善できなかった設計者の認識不足にあったと述べた。
3次元設計化による設計改革の視点は「モノ作りの効率化」に集中し、やがて2次元図面をなくそうという「図面レス」の議論が2000年頃からはじまり、それ以後、様々な場面でこれをテーマにした議論が繰り返されてきた。
読者の皆様は「図面レス」という言葉をご存知と思うが、では「図面レス」の定義は?と問われて明確に答えられる人は少ないのではないだろうか。言葉だけが先走りした典型的な例の一つではないだろうか。
今回は、この「図面レス」について整理してみる。
図1 図面の役割要素とその代替について
様々にあった「図面レス」の動機
「図面レス」とその議論の動機は様々である。
@開発期間の短縮のためにコンカレントに作業を進めるには3次元モデルデータの早期活用が不可欠であり、図面の完成時期はこれに遅れるため整合しにくい。 [製品メーカー]
A3次元モデルデータを苦労して完成させた後に、製品特性を2次元の図面に定義するという作業工程が、設計の合理化の観点で重要な改善課題である。 [メーカー開発部門]
B3次元モデルデータだけでモノづくりを可能にすることはビジネスチャンスを生み出す。 [各種製造業者]
C図面レスが成立すれば3次元CADの導入効果としてアピールしやすい。[システム導入部門、CADベンダー]
D図面レスが成立すれば設計者は手間が省けて楽ができるとの期待感。
[設計者]
E図面レスが成立すれば設計情報がしっかりと下ろされるとの期待感。
[製造部門]
このようにそれぞれの立場の人達にそれぞれの動機があり、これらの人達が集まった場合、その動機が整理されないままに議論が空回りする場面も多かった。
「図面レス」のゴールの想定
では図面レスのゴールとしてはどのようなことを想定していたのか。
@世界共通に、新たなモノづくり手法として標準化されること。
[図面レスの標準化]
A自社(グループ)独自の技術で成立させられる手法として確立する。
[企業競争力強化]
B特定の事業に限定して、モノづくりの効率化を確立する。[事業の改善]
つまり、「図面レス」のゴールはそれを適用する範囲の大きさによって異なり、到達の難易度はその適用する範囲の大きさによって大きく異なる。