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Automotive2007年5月 日産のモーター革新
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スーパーモーターの構造(左)と発明者の中野正樹電動駆動研究所所長 |
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自動車がその名の通り自ら動き出すためには駆動源が必要になる。しかし従来の駆動源であるガソリンエンジンは、原油市場の高騰、排出二酸化炭素による地球温暖化などを理由に、新しい駆動源への置き換えを迫られている。その新しい駆動源を使った次世代自動車として提案されているのが、電気エネルギーを利用するハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)、ガソリンに代わる代替燃料を使う水素エンジン自動車、エコディーゼルエンジン自動車、天然ガス自動車などである。これらの次世代自動車のうち、ハイブリッド車についてはすでに、トヨタ自動車のプリウスをはじめ年産数十万台の市場を形成しつつあるものの、他の駆動源に関してはまだ開発段階と言ってよく、2010年に各駆動源で年産数万台に到達するかどうかという状況である。ハイブリッド自動車についても、次世代ハイブリッドとされる充電可能なプラグイン・ハイブリッド車は現時点でコンセプトモデルが各社から発表されている程度だ。どちらにしろ、電気エネルギーを利用する次世代自動車には、電力を動力に変換するモーターが必要だ。現在の自動車製造では、構成部品の60〜70%はTier1以降のサプライヤが供給しており、自動車メーカー自身が生産しているのは車体構造系とエンジンだけと言われている。特にエンジンは、外部に出すことを極力避けてきた自動車メーカーの研究開発の中核である。そして電気エネルギーを利用する次世代自動車の駆動源であるモーターは、自動車メーカーが自社で研究開発を行って競合他社との差別化を図るテーマになり得る。トヨタのハイブリッド自動車への高い評価は、世代を重ねるごとに小型化、高出力化を図ってきた自社開発のモーターが大きく貢献している。
日産自動車でも次世代自動車開発に向けてモーターの自社開発に注力して来た。現時点で日産は、そのモーター技術の応用製品として最も市場の成長が期待されているハイブリッド自動車での出遅れが指摘されているが、この不利な状況を好転させる独自のモーター技術を準備している。それが「スーパーモーター」である。
2軸が独立駆動する原理。内側ローターを6相6スロット2極、外側ローターを3相6スロット4極とすると、一方でトルクの発生する周波数は他方でトルクが発生しない状態になる。そして互いにとって最適な周波数を複合した交流電流を流せば、内側ローター、外側ローターを独立で駆動できる
シンプルな構造と原理
スーパーモーターは、一つのモーターから2軸分の動力を生み出すことができるという画期的なコンセプトを持つ同期モーターである。その構造は非常にシンプルだ。一般的な同期モーターでは、巻線を使った電磁石により回転磁界を作るステータ(固定子)が外側に固定されており、内側に永久磁石などの磁極を持つローター(回転子)が1対1で存在し、ステータの電磁石に交流電流を流すことでローターが回転して動力を発生する。しかしスーパーモーターは、1つのステータに対してその内側と外側にローターを配置しており、この2つのローターから2軸分の動力を得るという構造を持つ。
磁界を利用しているモーターで、このように磁力源を隣接させたら互いに影響を及ぼしてまともに動くわけがない――普通はそう考えてしまうところだ。しかし同期モーターに関する知見があれば、スーパーモーターの駆動原理は非常に理解し易いものになる。通常の同期モーターは、ローターの磁極の数に対応した周波数の交流電流をステータの電磁石に流すことで駆動力を得る。その一方で周波数によってはトルクが相殺されてしまい、まったく駆動力が得られない場合もある。
スーパーモーターの原理は、内側と外側のローターの磁極数を互いにとって最適な電流の周波数ではトルクを相殺するように設計し、さらにそれぞれの周波数成分を含む複合電流をステータに流すことで、内側と外側のローターの駆動を自在に制御するというものである。現在開発を担当している総合研究所電動駆動研究所の初田匡之主任研究員と有満稔主査は「何よりその構造と駆動原理がシンプルなところに最大の特徴がある」と声を揃える。