スーパーモーターの断面図
スペースを有効活用
構造と原理はシンプルなスーパーモーターだが、実機として完成させるには課題も多かった。「内側と外側のローター内に埋め込む永久磁石の配置、冷却機構を持たせたステータ構造のバランスなど、最適な磁気設計を作るのが一番難しかった」(初田主任研究員)という。実際には、有限要素法(FEM)によるシミュレーションを行うことで、内側ローターの磁石はV字型に、外側ローターの磁石はモーターの中心軸に対して平行に配置し、磁石間の距離や磁石の厚みなどを最適化している。05年発表の論文では、外径240mm、長さ175mm、6相インバータ、電流480A、電圧350V、内側と外側ローターの最大出力40kWという要求仕様を、内側ローターの磁極数6、外側ローターの磁極数12、ステータの電磁石数18で実現するなど、すでに基礎開発は完了している。今後は、研究所の手を離れ、信頼性や量産方法など実際の製品に採用することを前提とした生産技術開発などの段階に入る。「スーパーモーターの研究も継続しているが、その知見を基に新しいモーターの開発にも取り組んでいる」(有満主査)という。
スーパーモーターの利点は、二つのモーターを必要とする自動車を一つのモーターで実現できることにある。合計出力が同じ場合、モーターの占める容積を30%以上節約することが可能だ。インバータの総出力はモーター二つの場合と同じだが、やはりユニットをひとまとめにできることからワイヤハーネスなどを削減できる。さらに重要なのが、モーター二つの場合それぞれ最大15kWまでしか出せないのに比べて、スーパーモーターでは内側ローターを30kW、外側ローターを0kWなど出力配分の自由度が高いこともメリットになる。
電気エネルギーを利用する次世代自動車は、同軸上で二つのモーターを使用するものがほとんどである。例えば、左右の車輪を独立制御する電気自動車や、駆動源となるモーターとエンジン動力を充電するための発電機を持つハイブリッド自動車などが挙がる。特にハイブリッド自動車では、駆動源のモーターも減速時には回生ブレーキにより発電することになるため、エンジン用の発電機と一体化すれば充電効率などを向上できる可能性がある。
初田主任研究員は「自動車開発では、いかにして限られたスペースを有効利用できる技術を生み出せるかということを常に求められる」と強調する。以前電動四輪駆動システム(e・4WD)の開発に同氏が携わっていた時、運転席近くに配置する後輪駆動ユニット用の発電機のスペースを確保できずに苦慮したが、同時期にパワーステアリングが電動式になったことで空いた油圧ポンプのスペースを確保することができたという経験がある。「自動車のエンジニアは“スペース”エンジニアと言っても過言ではない」(初田主任研究員)という。