日産自動車、NEC、NECトーキンは4月13日、自動車用リチウム(Li)イオン電池の開発を目的とした合弁会社「オートモーティブ・エナジー・サプライ株式会社(AESC)」を設立することで合意した。AESCは、2009年度を目標に自動車用Liイオン電池の量産を開始し、日産を含めた全ての自動車メーカーに販売して行く方針だ。またハイブリッド車用を想定した、従来比2倍以上の出力密度(約3kW/kg)を達成した新型Liイオン電池の開発に成功したことも発表した。ハイブリッド車開発で遅れをとる日産だが、Liイオン電池のコスト低減を外販による“規模の経済”で実現し、巻き返しを図る。
(左から)NECトーキン仲田武彦社長、NEC鹿島浩之助専務、日産自動車カルロス・タバレス副社長、篠原稔常務
2009年度までに量産販売
AESCの資本金は4億9,000万円。出資比率は、日産50%、NEC42.5%、NECトーキン7.5%。本社は神奈川県相模原市に置く。社長は日産側からジヤトコの大塚雅彦VPが、副社長はNECのハイブリッド車用リチウムイオン電池開発子会社NECラミリオンエナジーの吉岡伸晃事業推進本部長が就任する。従業員数は約20人。4月末に操業を開始してから1年間は製品開発とマーケティングを行い、09年度までには量産販売を開始する予定だ。
日産のカルロス・タバレス副社長は「日産は2010年までに独自技術のハイブリッド車を、10年代の早期に次世代の電気自動車を市場投入する計画で、そこで用いるLiイオン電池の開発に注力してきた。この画期的なLiイオン電池技術を広く利用してもらうために、今回AESCという専門会社を立ち上げて、他社にも積極的に販売して行くことにした」と語る。
AESCが生産するLiイオン電池は、両者が5年以上前から共同開発してきたもの。NECグループのラミネート型マンガン系Liイオン電池セルをベースに、日産が自動車向けに最適化した組立技術と制御技術を融合した。
正極材料には、過充電しても安定な結晶構造や高い出力密度が特徴のマンガン酸Liを用いている。携帯電話やPCなどのLiイオン電池の正極材料であるコバルト酸Liに比べて低コストで、過充電に対する保護回路が不要になる。さらにラミネート型セルを積層してモジュール/パッケージ化するので、従来の円筒型に比べ放熱性能と設計自由度でも優れている。
出力密度2倍を達成した新開発の自動車用Liイオン電池。右上はラミネート型セルの単体、右下はラミネート型セルを積層したモジュール、左は自動車に組み込むバッテリーパック
日産の技術開発トップの篠原稔常務は「Liイオン電池単体としての性能だけでなく、自動車メーカーである日産が長年開発して、自動車用に十分な性能を確保した製品であるということが重要だ。従来比2倍以上の出力密度を持つ製品は、基礎開発は終了しており今後は量産に向けた生産技術開発の段階に入る。価格については顧客数次第なのではっきりとした数字は出せないが、従来よりも大幅に削減できるだろう。ニッケル水素電池に比べて我々のLiイオン電池が優れていると確信している」と優位性を強調する。
NECは、富士重工業など日産以外の自動車メーカーに納入しているLiイオン電池についても、事業体制が整い次第AESCに一本化する方針。「自動車用充電池の市場は、現時点で3,000億円以上とも言われているが、今後はAESCの活動を通じてグローバルシェアトップを目指す」(NEC鹿島浩之助専務)という。現時点での生産は、セルをNECトーキンの富山事業所で、組立は日産が行っている。「試作生産はこの体制で行く。すでに国内外20社以上の自動車メーカーに試作品を提供した」(NECトーキン仲田武彦社長)。
ハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などの電動自動車では、充電池が自動車の性能を大きく左右することから、自動車メーカーは他社との協業で開発を加速している。トヨタ自動車は、松下電器との合弁会社パナソニックEVエナジーでハイブリッド車用ニッケル水素電池の開発、生産を行っている。
(朴 尚洙)