Microsoft Vistaと生産性スイートOffice 7は、閉鎖的なエンジニアリング環境から設計データを解き放つことを約束する。問題は、設計者側にデータを共有する準備ができているかどうかだ。
著者_ Beth Stackpole
ハードウエア/ソフトウエア担当
コントリビューティング・エディター
Regina Lynch
Webエディター
1つの図が100の言葉に匹敵するとすれば、3D画像はもっと貴重なものになるのではないだろうか。だが、その理屈では、米Microsoft社の新しいオペレーティングシステム(OS)Vistaと生産性スイートOffice 7を利用しようとするCADベンダの間に見られる最近の慌ただしい動きの説明がつかない。各CADベンダは、このプラットフォームが3D設計データを普及させる手段になると考えている。その対象は製品開発工程に欠かせない存在だが、必ずしも従来のエンジニアリングおよび設計の組織の一部に属しているわけではない一般ユーザーとなっている。
今年1月のMicrosoft Vistaのリリースを受け、米UGS社、米SolidWorks社、米Autodesk社、仏Dassault Systemes社などCADソフトウエアを提供する主要企業の大半は、同OSがサポートする基本機能のさらに上を行く自社製ソフトウエアの新バージョンを準備中である。具体的には、これら新作のCADプログラムの多くは今年後半にリリース予定で、Vistaの改良された機能(検索、ユーザーインターフェース、セキュリティ、パフォーマンス強化)を利用し、3D機能を充実させ生産性をさらに向上させ、ある程度ではあるが至るところにあるMicrosoft社のOfficeスイートを利用する標準的な生産性の作業者でも3D機能が利用できるようになっている。
Teamcenter 2007では、Wordで作成された製品関連のドキュメントが適切なTeamcenterのワークフローに自動的に対応付けられ、操作できるようになる
例えば、UGSは、同社のPLM(Product Lifecycle Management)製品Teamcenterのプラットフォームを新しいOffice 7スイートから直接利用できるようにする取り組みを行っている。これにより、製品開発に携わる技術者以外の調達担当者や営業担当者などは、自分たちの標準アプリケーションの使いやすさを損なわずに、また3D CADツールを購入し習得する必要もなく、製品設計にアクセスしたり、製品設計の初期段階から設計に関与できるようになる。SolidWorks社など一部のベンダは、部品および設計の再利用の促進をねらい、Vista内蔵の検索機能を最適化して3D CADモデルと連携させ、部品や設計の再利用を推進しようとしている。一方、Autodesk社のように、VistaのXMLと3D機能を活かして容量の軽い3Dモデルの共有とマークアップを促進しようとするベンダもある。
「我々は、どの業界でも3Dに対するニーズの高まりを確認しつつある」と語るのは、Microsoft社の企業パートナーグループ(Enterprise Partner Group)でPLM分野のテクノロジ・ストラテジストを務めるSimon Floyd氏である。このグループは、ワシントン州レドモンドに本社を置くこのソフトウエア大企業の製造業グループ(Manufacturing Industry Group)に属している。「3Dの表現力は非常に高い。CAD、医療用途、ゲームの分野に縛られることなく、我々は、そうした分野の人々が以前から3D環境で得てきた利点の一部を選び、Vistaに導入した」(Floyd氏)。
CADデータをオープンにして(民主化と呼ぶベンダもある)、独自仕様のエンジニアリング・システムに封じ込めずに企業の全体からアクセスできるようにすることは、グローバルな製品設計が行われる今日の風土では不可欠である。企業は、自ら選んだCADツールを必ずしも所有したり必要としていない広範にわたるサプライヤやエンジニアリング・パートナー企業と、3Dモデルの共有や設計の繰り返しを容易に行えるようにするツールを求めている。また、マーケティング、調達、製造などエンジニアリング以外の多くの機能も設計プロセスに盛り込む必要があることから、本格的なCAD環境はトレーニングとコストの点でオーバースペックになる可能性がある。
米UGS社のNXは、Vistaの新しい3Dグラフィックエンジンとユーザーインターフェースの機能を利用してCADユーザーの操作性を向上させている
Microsoft社のVistaおよび新Officeのプラットフォームは、CADベンダが自社製システムに蓄えた知的財産をアピールする手助けになる。しかし、それは、製品設計および開発をより機能横断的なプロセスにするために行われている多くの取り組みの中の1つに過ぎない。「CADデータのオープン化は、この部分しか進んでいない」と話すのは、ボストンの市場調査会社AMR Research社のバイスプレジデント、Mike Burkett氏である。「Vistaは、こうしたCADベンダがたどった段階的な道筋、つまり、非エンジニアリング環境とより効果的に情報をやりとりできるようにする道を提供する」(Burkett氏)。