棒材から最終形状までの変化の様子。通常の工程全体の所要時間は6秒
(出典:Latronics社)
ニアネットシェイプ鍛造加工技術の進化により、エンジン性能の向上、石油やガスの掘削ドリル部品の強化、高出力半導体のハーメチック(気密)シールの性能改善に向けた道が開けようとしている。
ブラジル・サンパウロ市のThyssen Krupp Metalurgica Campo Limpo社(http://rbi.ims.ca/5384-528)は、ディーゼルエンジン用ピストンの製造に利用可能な新しいニアネットシェイプ鍛造加工法を開発した。同社によると、この加工法では、工程時間が最大で23%短縮し、工具の摩耗が大幅に減少するという。
同社の先端技術グループ部門に属するSergio Guerreiro氏は、「当社のソリューションは、多軸による機械加工を必要とせず、ニアネットシェイプ鍛造という生産技術を進化させるものだ。ピストンの溝(リングまたはカラー状)は、多軸プレスを使用して鍛造するか、鍛造後に切削加工するのが一般的だ。当社では、リバースエンジニアリングの手法を用いて、高価な多軸プレスを必要としない鍛造プロセスを新たに開発した」という。ThyssenKrupp社は、この工程は彼ら独自のものだとしてそれ以上の詳細は公開していない。
この工程では、工具を一つの軸方向に移動するだけで済むので、工具のコストを大幅に削減することができる。Guerreiro博士によると、新開発の工程では分割タイプの工具を使用しているが、これにより、顧客側の予備部品の在庫を従来比で14%削減できるほか、ピストン全体の重量は14%軽量化し、機械加工にかかる時間は23%短縮、工具のコストは20%減少、鍛造ダイの寿命が50%向上するという。また鍛造工程そのものの質も向上する。「この鍛造工程は、途中で切削工程による中断がない。これによって、ピストンの機械的特性も改善する」(Guerreiro氏)。
この技術開発が行われた背景には、高出力ディーゼルエンジンの需要の高まりがあるが、これらディーゼルエンジンに対する環境規制は、年々厳しさを増している。エンジンの性能は、ピストン、コンロッド、クランクシャフトを最適化することによって向上できる。
ThyssenKrupp社は、1954年に設立されたブラジルの自動車部品メーカーで、現在の従業員数は3,100名である。
一般に、ニアネットシェイプ鍛造は、冷間揺動鍛造と呼ばれる加工法によって行われる。この加工法では、固定されたダイに対してパンチがプレス方向軸を中心にした軌道に沿って動くことにより、複雑な形状のプレス加工が行われる。下のダイを油圧で持ち上げている間、上のパンチは金属素材上で軌道に沿って転動する。素材は下のダイに押しつけられながら成形される。
ペンシルベニア州ラトローブのLatronics社(http://rbi.ims.ca/5384-529)の技術担当副社長Ronald JYurko氏によると、冷間揺動鍛造プロセスによって達成できるワークの外径精度は、±0.002インチ(0.05mm)だという。Latronics社では、半導体パッケージに使う金属-金属間ハーメチックシールに使用する材料の機械特性と効率を向上させるため、ニアネットシェイプ鍛造を採用した。冷間揺動鍛造では、部材が硬化するため、漏れを起こさない部品を製造するのに非常に適している。
現在Latronics社では、ニアネットシェイプ鍛造を使って、ギヤ、クラッチ部品、スポーツ用品、オイル・ガス関連装置など、多数の分野の製品を製造している。
(Doug Smock、コントリビューティングエディター)