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ROBOTICS

2007年6月

ROBOTICS
火星探査に向けた「飛行可能」な設計

火星探査用ロボット・サブシステムの設計で目指す最適化
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Honeybee Robotics社のサンプル操作システム(Sample Manipulation System:SMS)は、科学調査のために、サンプルを取り込み装置から2基ある熱分解オーブンのうちのひとつまで正確に操作する

 宇宙ミッションに向けてロボット・サブシステムを調整し、“飛行可能”にすることは、軽量化や小型化、そして制御アーキテクチャの簡略化など、効率的な宇宙システムの設計に必要な要素すべてを促進する。
  米航空宇宙局(NASA)が2009年に打ち上げを計画するMSL(Mars Science Laboratory)に搭載されるサンプル操作システム(Sample Manipulation System:SMS)を開発する米Honeybee Robotics社(http://rbi.ims.ca/5389-519)のエンジニアにとってこのような目標は、飛行設計の最適化を達成するための機能凝縮についての厳しい開発思想につながった。
  機能凝縮というアプローチの目的は、凝縮した機能を個別かつ特定のポイントにのみ組み込むことで設計を最適化することにある。機械的エネルギーの伝搬とセンサー分解能をあらかじめ設定したポイントに提供する能力が、高い信頼性と精密な動作に結びつく。
  「最近手がけた再設計の主な目標は、SMSを飛行可能にし、システム全体に課せられる設計上の制約に適合させることにあった」とHoneybee社のシステム・エンジニアであるErik Mumm氏は言う。「システム全体に合わせてSMSも進化した。要件事項が出て、調整するごとに、設計がその新たな要件事項に適合するよう変更された」
  SMSは、MSLに使用される計器類一式、SAM(Sample Analysis at Mars)のロボット・サブシステムである。SAMは、固体サンプルから得られる気体や火星の大気を分析する。固体サンプルの処理では、サンプルの移動が必要となる。サンプルは、取り込み口を経て、密封し熱処理するオーブンまで運ばれる。SMSの役割は、サンプル取り込み装置から2基ある熱処理オーブンのいずれかまで、サンプルを正確に移動することにある。オーブンへの挿入時、サンプル用カップは、最大1334N(300lb-f)の力をかけ、熱分解オーブン内で密封するようSMSに要求する。
  Mumm氏によれば、再設計における最大の課題は、SAMで処理可能なサンプル数を最大化することだったという。つまり、これはアクチュエータ数を減らしつつ、サンプル用カップの数を増やすことを意味する。また、すべての宇宙用機器同様、システムをできるだけシンプルに保ち、信頼性を確保する必要があった。
  「3自由度システムのアクチュエータを2個までに減らした。そして、74個のサンプル用カップを許容空間内に収めることができた。最初の設計では8〜10個だった。また、機器の質量を1.5kg減らした」(同氏)。
  SMSの最適化で最も重要なのは、アクチュエータ数を5個から2個に移行し、回転台用と昇降用に1個ずつ割り当てた点である。新システムではこの移行を実現するため、サンプル用カップを円状に2列で配置し、トグル・ロック経由でREFからサンプル用回転台のロックおよびロック解除を実行するために昇降用アクチュエータを使っている。
  トグルにより、回転式昇降フレームを使ったサンプル用回転板の接地や作動が可能となっている。1つのアクチュエータが、サンプル用カップを所定の場所に配置し、昇降用アクチュエータを所定のサンプル用カップの下に移動し、サンプルを受け取るためにサンプル用カップを上昇させたり、サンプルを載せたカップをオーブン内に挿入する。
  「このシステムでは、1個のアクチュエータで2自由度を実現している。ラッチ機構をトグルで留めることで、回転台の回転や地上でのロック、そして、回転台とは独立した昇降部の移動が可能となった」(同氏)。

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ロック解除された状態で、システムの昇降部は、回転台およびサンプル用カップを移動し、所定のサンプル用カップをインターフェースの下に配置する

  昇降用の機構は、136kg(300ポンド)の力をかけ、カップを熱分解オーブン内で密封することができる。また、このアクチュエータは、トグル・ロック機構を開閉するカムの駆動にも使われる。ねじジャッキは、モーターの出力を直線運動に変換する。アクチュエータに複数の機能を持たせることは、システム性能を犠牲にせず、制御用電子機器への負荷を低減することにおいて重要である。
  SMSはブラシレス直流モーターを内蔵している。シンプルさを理由にステッパー・モーターの使用が初期の段階では検討されていた。しかし、その後、ブラシレス・モーターへの移行が決定された。その背景には、昇降用モーターが持つ2つの機能があった。動作継続時間の時間制限にともなうプリロードの間、ストロークの終わりで高トルクを与える必要があったため、高速および高トルクのアクチュエータが必要とされた。回転軸用アクチュエータにステッパー・モーターを使うことも可能だったが、ブラシレス・モーターが選ばれたのは、制御の共通性だけでなく、認定や調達の容易さも理由としてあった。
  フィードバック検出は、SMSの位置決めに関する特定要件を満たす一方で、センサーの電気機械システムへの影響を最小限にとどめている。Honeybee社では、この機械システムの機能を利用する機構の出力部分で、特殊なインクリメンタル(相対値)エンコーダを設計することにした。このアプローチは、接地リングの歯形を生かし、一組の配置済み赤外線LEDと光トランジスタ用の光学的なスリットとして使っている。
  Honeybee社によれば、この設計によりSMSでは、回転軸および回転台軸の正確な位置決めが、アブソリュート(絶対値)エンコーダなど機械的および電気的に負荷の大きな部品がなくても可能になっているという。アブソリュートエンコーダでも同レベルの精度を実現できるが、そのためには組み込み時の位置調整を完全にする必要がある。
  SMSの制御アルゴリズムは、単純な状態機械に適している。制御方式はこの機械システムに特化しており、SMSの制御アルゴリズムの各ステップで、単一スイッチの予測可能な状態遷移を提供する。別のスイッチで状態遷移が検知されると、機械システムで障害が発生する前に誤りが検出される。
  複雑な意思決定アルゴリズムは、このアプローチでは不要だ。この機械システムの設計では、与えられたコマンドに対し個別に動作終了の条件が作成されている。スイッチの状態遷移は、検証用のホール計測器の予測値を基準にしている。
  機能凝縮設計というアプローチを使うことで、SMSの動作を管理するルールを決定している。この単純なルールが1つでも破られると、誤りを容易に検出できる。誤りの原因は、どのルールがコマンドシーケンスでいつ破られたかによって推測される。
  凝縮した機能という考え方をアクチュエータ、センサー、そして機械構造に適用することで、Honeybee社は設計の最適化を重量、大きさ、制御の単純化という面で実現した。この設計戦略は、完全に定義された要件と特定のインターフェースが設計の高度なカスタマイズを可能にする飛行システム設計のための優れた手法だと証明された。
(Al Presher氏、コントリビューティング・エディター)

Mars Science Lab(MSL)Exploration Programの詳細についてはこちらから:
http://rbi.ims.ca/5389-520

 


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