プラスチック複合材料の積極的採用で、ボーイング787は軽量化、新設計コンセプト、長寿命化、客室内の高い与圧を実現した
著者_Doug Smock
材料担当、コントリビューティング・エディター
オーストラリアにあるボーイングの関連会社Hawker de Havilland社は、787型機の複合素材製の翼後縁部を製造している 出典:ボーイング社
米Boeing(ボーイング)社が787ドリームライナーの構造部材として複合材料の採用検討を開始した時点で、同社の技術者たちは、エポキシ/炭素繊維マトリックス複合材料が機体重量を大幅に削減し、燃費向上や航続距離の増大を可能にすることを直感していた。しかし、同社が複合材料に関する調査を進めていくと、根本的な設計変更による機能のシステム統合や、薄層流を変化させることによる空気力学性能の向上も可能なことが判明した。
素材の点で見ると、787ドリームライナーは、製造業の歴史の中で最も革新的な飛躍の一つと言える。一方で、2008年5月の1号機納入という厳しいスケジュールに間に合わせるためには、極めて高いハードルを短期間で乗り越えなくてはならない。以下に、そうしたハードルのうち、主要なものを挙げる。
・炭素繊維強化プラスチックを使った大型の構造部材が大量生産された前例がない。炭素繊維強化プラスチックは熱硬化性材料であり、製造にかかる時間は熱可塑性プラスチックよりも格段に長い。
・こうした大型部材の製造装置はまだ開発段階にあり、実際に機体の開発プロジェクトを遅らせる数少ない障害の1つになった。
・アルミ材料使用時には不要だった、亀裂の拡大を防止するための新しい皮膜の開発が必要になった。
一方、材料技術そのものについては、新たに開発する必要はなかった。ボーイング社で材料技術統括チーフエンジニアを務め、現在は787型機の技術統合担当ディレクターであるAlan G. Miller博士は、「我々が787の翼、胴体、ビームなどに複合材料の使用を決定したとき、777型機で豊富な製造経験のある材料をベースに判断した」と言う。「寸法安定性などの材料物性については、すでによく理解していた。また、製造プロセスに与える影響についても知っていた。多くの設計許容値についてのデータベースも揃っていたし、顧客からも十分な信頼を得ていた」
ボーイング777型機で総重量の9%に過ぎなかった複合材料は、787型機では50%を占めることになる。777型機が就航している間に、炭素繊維強化プラスチック材料の特性、製造技術ならびに生産コストが改善されたのである。
複合材料はすべて、世界最大の炭素繊維メーカーである東レから購入している。2004年以来、ボーイングが東レに注文した複合材料の合計額は約7,300億円(60億ドル)以上と見積もられ、他の顧客への価格や供給量に与える影響も大きい。この見積もりは06年時点の生産予測に基づくもので、787型機の受注が好調な現在では、すでに実情に合わなくなってきている。