ボーイング787型機は、ブリードエアの使用をやめ、電気式のスタータジェネレータに大きく依存する設計を採用した。この変更がエンジン設計そのものを進化させるきっかけとなった
著者_Joseph Ogando
モーションコントロール担当、シニア・エディター
巨大なエンジンのテストは、簡単ではない。写真は、GEnx用のテストスタンドだ。テスト内容の1つに、エンジンからの電気エネルギー放散がある。テストは、2台の250kVAスタータジェネレータと連動して動作させなければならない 出典:GE Aviation社
ロールスロイス社のTrent 1000エンジン
出典:ロールスロイス社
商用航空機のジェットエンジンは、革新的な方法によって飛躍を遂げるのではなく、徐々に進化しながら発展していく傾向がある。こうした発展で最も恩恵を受けるのが、太平洋航路の長距離フライトである。ボーイング787ドリームライナー(http://rbi.ims.ca/5393-599)に搭載される2つの競合エンジンプラットフォームもまた、多くの点でこうした進化型の発展過程を歩み続けている。米GE Aviation社(http://rbi.ims.ca/5393-600)の「GEnx」と英Rolls Royce(ロールスロイス)社(http://rbi.ims.ca/5393-601)の「Trent 1000」は、いずれも両社の過去のエンジンプラットフォームの設計上の特徴を受け継いだ製品となっている。とはいえ、過去の設計の単なる延長にはならなかったし、実際にそんなことは不可能だった。ボーイング787型機の性能仕様を満たすため、両エンジンメーカーは、過去の実績のある技術体系を維持しながら、なおかつ技術革新を実現する必要性に迫られたのだ。
特に重要な条件の1つは、従来の航空機と比較して燃料消費を大幅に削減するというものだった。ボーイング社は、787型機は同等サイズの他の航空機よりも燃費が20%以上良いとしている。787型機の推進システム担当チームのリーダーを務めるRon Hinderberger氏によると、この20%の燃料効率向上のうち8%が新型エンジンから得られたという。「当社が設定したこの厳しい条件を満たすため、両エンジンメーカーは、社内のエンジン開発プロジェクトの総力を結集して、2010年に完成予定だった技術を2008年に前倒し供給できるように計画を見直した」(Hinderberger氏)。ボーイング社はまた、787型機における窒素酸化物(NOx)と二酸化炭素(CO2)の排出規制目標をより厳しく設定した。同社によると、787型機は、これらの排出物の量を同等サイズの他の航空機よりも最大20%削減できるという。
787型機の設計の初期段階で、ボーイング社のエンジニアは、電気システムの利用を大幅に推進する方針を固めた。具体的には、新型のスタータジェネレータの搭載やエンジンのブリードエアシステムの廃止などである。これらはいずれも燃料の燃焼効率の向上と排出物の削減に寄与し、機体そのものの長期的な保守費用を削減する効果もある。Hinderberger氏によると、両エンジンメーカーは、787型機に新たに搭載する大型のスタータジェネレータとノンブリードシステムをうまく組み合わせたエンジン設計を考え出したという。しかし、そのためのアプローチには大きな違いがある。
ジェットエンジンの設計を専門としない技術者にとっても、両社の設計の違いから学べることは多い。そこからは、電気システムに対する一般的な動向や、実証されていない技術を採用できない場合の設計最適化技術が果たす役割などを学べる。