電動化の推進
ボーイング社が787型機に搭載する“電動化アーキテクチャ”には、従来は搭載が不可能だった大型のスタータジェネレータが含まれている。787用エンジンには、1台につき、米Hamilton Sundstrand社(http://rbi.ims.ca/ 5393-602)製の250kVA可変周波数タイプのスタータジェネレータが2台搭載される。名前からも分かるように、これらのスタータジェネレータはエンジンの始動に用いられるとともに、フライト中には他のシステムに対して電力を供給する役割も担う。それに対し、A767型機では、120kVAのジェネレータ(発電機)を1台搭載しているだけである。
787型機には、他にも補助電源装置に2台の125kVA発電機が搭載されるが、このように大きな給電能力を搭載できるようになった背景には、産業界全体で進行している発電機の出力密度の向上がある。Hinderberger氏によると、787型機の250kVA発電機2台が占めるスペースは、15年前に767型機に搭載した120kVA発電機1台が占めるスペースをわずかに上回るだけだという。「15年前には、120kVA発電機1台を250kVA発電機2台に置き換えようとしても不可能だった」(同氏)。
Hinderberger氏によると、両エンジンメーカーは、新型発電機を難なくエンジンへ組み込んだという。技術者出身で現在はGEのGEnxエンジン担当のゼネラルマネジャーの1人であるMelvyn Heard氏は、このエンジンと発電機の接続部分について、“単純なギアボックスに近いもの”だと説明する。
ただし、スタータジェネレータとの接続方法に関して、この2社のエンジンには重要な違いがある。ロールスロイス社のTrent 1000エンジンは、高圧、中圧、低圧の3つのコンプレッサーに対して別々のシャフトを使用する3軸型のエンジンであり、同社はスタータージェネレータを同エンジンの中圧(IP)コンプレッサーに接続するようにした。同社への取材は実現していないが、発表資料によると、このIP Power Offtake System(中圧系統用の始動システム)には、中圧と高圧のコンプレッサーを連結するメカニズムが搭載されていて、これによって始動時に必要な大トルクに対応するという。一方、Heard氏によるとGEは、単純にスタータジェネレータを2軸型のGEnxエンジンの高圧コンプレッサーに接続している。
Hinderberger氏によると、ボーイング社では、これらのアプローチがエンジンの始動と発電に関する要件を満たしているため、その違いについて口を差し挟むことはないという。いずれのエンジンも、始動時には発電機2台を使って40秒以内で始動し、発電機1台の場合には70秒で始動するという条件をクリアしている。「一方が2軸で他方が3軸という違いはあるにせよ、当社にとってみれば、どちらも回転エネルギーを提供して出力を発生させるギアボックスであることに変わりはない」とHinderberger氏は言う。エンジンからの出力の取り出し方法がアイドリング時、離陸時、上昇時、巡航時における負荷サイクルに与える影響について、ボーイング社ではこれらエンジンメーカーの裁量に委ねている。「詳細は、彼らだけが知っている」と同氏。