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Cover Story2007年7月 B787スペシャルレポート 第1回
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| 出典:GE Aviation社 | 出典:ロールスロイス社 | |
GEnx(左図)とTrent 1000(右図)。外観形状は似ているが、内部の設計コンセプトは大きく異なっている。GEnxはGE90エンジンの2軸設計を踏襲し、Trent 1000は3軸設計を採用している |
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ブリードエアの利用を廃止
ボーイング社の電動化アーキテクチャが可能にしたエンジン関連の最も大きな変更点は、「ブリードエア」利用の廃止である。これまでのジェットエンジンでは、エンジンから取り出した高温の圧縮空気(ブリードエア)を使って、翼面の解氷や空気圧アクチュエータの駆動、客室内の圧力保持などを行うのが一般的だった。787型機には、1.5MWの電力供給能力が搭載されるので、ブリードエアに頼っていたこれらの仕事を電気駆動のコンプレッサーによってまかなえるようになる。
ノンブリードエンジンの利点については、航空宇宙分野の専門家の間で議論が続いている。しかし、Hinderberger氏は、ノンブリードエンジンにはいくつかの大きな利点があると考えている。その1つは、エンジンそのものの効率の良さである。「エンジンからのブリードエアを使うと、燃料コストに直接響く」(Hinderberger氏)。しかし、同氏は、これまでブリードエアが担ってきた仕事を実行するために追加導入する新しいシステムもまた、航空機全体の燃料消費に影響することも指摘している。「この方式で最後までやり通すには、実際のところさまざまな苦労をする」(同氏)。「しかし、ブリードエアの使用量を減らせば減らすほど、エンジンのために良いことをしているのは事実だ」
ノンブリード方式によって目指したものは、燃料効率の改善だけではない。ノンブリードエンジンを導入すれば機体に搭載する空気圧部品の数を大幅に減らすことができ、重量と保守管理について効果を見込める。「今回の設計では、機体に搭載する交換可能ユニットの数を大幅に削減できた。これらは、従来の航空機では継続的保守費用の大きな部分を占めてきた。これを航空機の維持費から除外できるだけでも、メリットはかなり大きい」(Hinderberger氏)。また他にも、ブリードエアに関連するダクトや配管も不要になる。「これによってエンジンの各部分に対するアクセス性が格段に向上する」と同氏は言う。
それでも、ノンブリードエンジンだけが今後のエンジン開発の進むべき方向だいう考えには、納得しない人もいる。Heard氏は「ブリードエアの問題について、我々は中立な立場を取っている」と言う。同氏は性能面でノンブリードとブリードエア方式の間に大差はないとしている。ノンブリード方式のTrent 1000エンジンと異なり、GEnxプラットフォームでは、ブリードエア方式とノンブリード方式の両方を用意している。現在開発段階の航空機では、仏Airbus(エアバス)社のA350とボーイング747の新型モデルでブリードエア方式が採用されている。
設計最適化
787型機のエンジンに関するエンジンメーカーの取り組みは、新型スタータジェネレータとノンブリード方式の組み込みだけではない。GEもロールスロイスも、787型機用のエンジンに対して、実績のない技術は採用できないという制限を受けたが、従来から使われていた技術の最適化や改善によって性能を大幅に向上させた。例えば、GEのエンジンは同社のGE90モデルをベースにしているものの、材料と燃焼器の技術革新によって重量の削減と効率アップを実現している。
Hinderberger氏によると、両エンジンメーカーは、「空気力学的に重要なすべての部分について、最適化と微調整を行った」という。これらの作業は、ボーイング社の機体の最適化作業と連携して行われた。「我々はエンジンメーカーと協同して、エンジンの熱力学サイクルを調節した。エンジンメーカーが新しい手法を採用するたびに、当社では重量、抗力、燃料消費を予測計算して機体性能と比較した。この共同作業は、最終的にお互いが納得するまで続いた」(同氏)。
Hinderberger氏は、2つのエンジンの設計コンセプトが大きく異なっているにもかかわらず、最適化作業を経ることによってサイズと形状がかなり似通ったものになったことを興味深く感じている。「ファンの外周の直径は、約25.4mm(1インチ)しか違わない。機体に搭載された状態を見れば、2つのエンジンの全体形状はほぼ同じに見える」(同氏)。
それでは、2つのエンジンの性能に違いはあるのだろうか?同氏は「違いはある」と言いながらも、その差は非常に小さなものだとしている。「当社としては、両エンジンメーカーとも、787型機に相応しく、航空会社の経済的利点につながる性能のエンジンを開発してくれたと考えている」とHinderberger氏は語る。