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モノづくりと人材

2007年8月

ソフトウエア開発の切磋琢磨で日本のモノづくりを支える


マセ・トシアキ

マセ・トシアキ 67年京都大学工学部機械工学科卒業後、日産自動車に入社。91年同社開発システム部部長。97年日産デジタルプロセス社長に就任。2000年に富士通出資により社名をデジタルプロセスに変更して現在に至る。
(聞き手:甲斐 真一郎)

デジタルプロセス
間瀬俊明社長

 

 デジタルプロセス(DIPRO)は、自動車業界をコアとする製造業向けデザイン、設計、試作、生産準備、生産にいたるエンジニアリングのプロセスに必要となるCAD/CAM/CAE/PDM/BOM/ネットワーク商品の規格、開発から販売、サービスを行なっている。
 私自身は過去25年間ほど日産自動車の内製ソフト開発側にいて、直近の10年間は欧米のソフト導入を進めてきた。日本の設計開発手法には優れたものが多くあり、私自身がたどった二つの道のハイブリッドによってさらに日本のモノづくりの強みを活かす道を構想している。

モノとモノづくりのソフト化
 モノづくりのモノとは何かを考えると、機械工学としてのメカ・ハードにエレキが加わってメカトロニクス、さらに最近は組込みソフトの領域が拡大する流れにある。一方、モノづくりのプロセス全体を支える仕組みも、ハード利用主導からCAD、CAM、CAEなどソフト化が進行している。自動車産業では、リアリティの人為的な組み換えとしてのシミュレーション技術をベースとするバーチャル・リアリティ活用が拡大している。
 モノづくり立国を旗印に日本の将来像を描くことに異論はない。しかし現場、現物、現実が、目に見えやすいハード的世界で現れるのに対し、モノづくりにおけるモノと道具のソフト化は見えない仕方で浸透している。日本はこの見えない流れをもっと重視する必要があるだろう。

3D強化の成果と課題
 CADをはじめとする3次元(3D)データ活用の強化によって日本はそのメリットを享受し、車両開発期間の短縮などに成果を収めてきた。試作車の台数も二十年前と比べれば半数以下になっている。
 一方で、かつての日本の優れた設計作業の仕組みを強制的に変更させられた部分もある。今や自動車の設計者は、自らはCADをほとんど使わず、専業モデラーがCADの作業を行ない、その結果をもとに設計者が判断する。この分業は欧米から流入した仕事のやり方だが、日本の自動車の設計者には大きな変化を強いた。
 しかし本当は日本の設計者とモノづくりにとってもっと強みを発揮する仕方があるのではないか。日本にはモノづくりとそのノウハウを反映した道具で追随するのでなく、自らがトレンドを作る、日本で切磋琢磨し継承するという意志が必要だ。そのあり方を追求していくのは私自身の夢でもある。

技術とマインド
 DIPROはソフトウエア企業であるから、人材が新たな価値を生む。ソフトウエア開発では、オペレーティング・システムのようなベーシックな開発、パッケージとしてのミドルウエア開発、アプリケーション開発などそれぞれに必要なスキル、マインドは変わってくる。DIPROでもコンサルティング、アプリケーション・ソフト開発、オリジナルのパッケージ開発などおのおのに異なる人材とその育成が求められる。
 ただDIPROで一貫する要求は、設計者やエンジニアが本当に欲しい道具は何かを理解できるということだ。その要求を満たすためには、相手の立場になり代わって考えられるという意味での対象業務の理解力、その設計者の意向を理解しその力になりたいというマインドと、それを実現するための手段としての基本的なITスキルが求められる。IT技術面では、3年間業務に携われば、その道で頂点に立つくらいの上達スピードを期待する。

試される人間力
 またソフトウエアの事業には、プロジェクト管理力、人間力もあわせて重要となる。ある特定の目標を定め、不特定の人間を束ねてその力を上手く発揮させ、一体となって作っていくための能力だ。これら全てをバランスよく持つエンジニアは得がたいかもしれないが、要求されていることを絶えず自覚することで、その能力は備わってくる。
 他方、これとは別に、ガラリと変わるIT技術の世界を背景に、革新的なアイデアによって独自の要素技術を生み出し、新商品を企画する数人の開発エンジニア集団も必要だ。ソフトウエアは物理現象ではなく人間が約束事を作りながら、人間の約束事に従って作っていく世界だ。ソフトウエアの開発で将来の発展性、拡張性を確保しようとすれば、構想力の大きさが重要となる。
 日本の製造業は、グローバリズムの風潮に安易に流されることなく、設計開発力を日本に留め置くべきだし、そのために製造の現場を国内に残すことが大切だ。


 

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