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2005年06月15日
ピエゾ素子を利用した最短噴射間隔0.1msの燃料噴射システム

 デンソーとトヨタ自動車は、電圧をかけると伸張するピエゾ素子をバルブ制御に使い、応答性を高くしたピエゾインジェクタを開発し、ディーゼルエンジン用の1800気圧コモンレールシステムに採用した。従来のソレノイドインジェクタでは最短噴射間隔が0.4msであったのに対し、この新しいインジェクタでは0.1msと短い。同コモンレールシステムは、トヨタ自動車が欧州で発売した「アベンシス」に搭載されている。

 コモンレールシステムは、電子制御できる蓄圧装置と応答性に優れたインジェクタにより、運転状況に合わせて燃料を噴射するシステム。燃料を送り込むサプライポンプ、燃料の蓄圧装置、インジェクタ、運転状況を検知するセンサーで構成され、サプライポンプで高圧にした燃料が、コモンレールと呼ばれる蓄圧室に蓄えられ、インジェクタから燃焼室に噴射される。

 インジェクタは、シリンダ内に燃料を噴射する装置で、この噴射特性がエンジンの燃費、排気、出力特性に大きな影響を与える。

 現在、デンソーが供給しているソレノイドインジェクタを使った1800気圧コモンレールシステムは、1回の燃焼で燃料を最大5回噴射できる。このほどこのシステムに応答性の高いピエゾインジェクタを使い、噴射期間を短くでき、噴霧粒子をより微粒化している。このため、燃焼がより完全燃焼に近いものとなり、燃焼効率が上がった。エンジン出力はソレノイドインジェクタ採用の1800気圧のものと比べると、10%程度向上している。また、排出ガス中の有害成分である粒子状物質(Particulate Matter:PM)や窒素酸化物(NOx)の発生も抑えている。

 ピエゾインジェクタを使うことで、瞬時に制御バルブを開閉し、インジェクタの先端にあるノズルニードルを高い精度で制御して、ノズル噴口部を燃焼効率が最適となる時間で開閉できる。つまり、より最適な量の燃料を最適なタイミングで噴射できるようになった。ピエゾインジェクタを使うことで、ソレノイドインジェクタを使ったものよりノズル噴口部を速く開閉できる。ノズル噴口部の燃料圧力が瞬時に高くなり、噴射される燃料の圧力をより高くできるため、燃料をさらに微粒化できた。圧力が高ければ高いほど、燃料粒子もより小さくなる。噴口部の開閉が遅い、つまり、ゆっくり開閉するとシリンダ内に噴射される燃料の圧力も徐々にしか高まらないため、せっかく高圧にした燃料の圧力が低下してしまい、燃料粒子も大きくなってしまう。

 デンソーは、このピエゾインジェクタ用に、素材や積層構造、電極構造を工夫し、長寿命で信頼性を高くしたピエゾ素子とバルブ構造を独自に開発した。

 従来のバルブ構造に比べて改良された点は、バルブを開閉するための電圧が小さくなったこと。従来はコイルを使った電流駆動の電磁弁制御だったが、今回はコンデンサによる電荷駆動の電磁弁制御になっているという。

 コモンレールシステムがないものでは、エンジンの回転の力を使って燃料を噴射しているため、エンジンの回転によってシリンダに噴射される燃料の圧力も変わってしまっていた。このため、エンジンの回転が高まるとエンジン効率が良くなり、回転が低くなると効率が悪くなるといったように、エンジンの回転速度に燃焼効率が依存していた。しかし、コモンレールシステムでは、常に燃料を高圧の状態でコモンレールにためておくことができ、そこから電子制御で燃料を出せるため、エンジンの回転速度に依存しないで噴出圧力と噴射時期を制御し、燃焼を効率的に行える。

排出ガス規制への取り組み

 デンソーは、ディーゼルエンジンの後処理システムの開発にも力を入れている。トヨタ自動車から5月に発売されたアベンシスの排出ガス浄化システム(Diesel Particulate NOx Reduction system:DPNRシステム)には、デンソーが供給するディーゼルエンジン排気中のPMをフィルタで捕集する装置(DPF:Diesel Particulate Filter)や、捕集したPMを燃やすために排気管内に燃料を噴射する排気燃料添加インジェクタが使われている。

 排気管内は高温なため、この排気燃料添加インジェクタが燃料を排気管内に噴射することで点火する。そして、この熱で排気管の中のフィルタに付着したPMを燃やし、フィルタの目詰まりを防ぐ。このフィルタは熱膨張係数の低いコージェライト製で燃えない。

 ますます厳しくなる排出ガス規制に対応するため、ディーゼルエンジンにはNOxやPMのような排出ガス中の有害成分をいかに抑えるかという課題がある。こうした課題への取り組みとして、ディーゼルエンジンの燃焼の応答性を改良し、走行性をよくすることと、排出ガスなどの環境負荷をなくすために、デンソーとトヨタ自動車は共同でこの燃料噴射システムを新たに開発した。

 トヨタは、2、3年後の製品化を目指し、2000気圧コモンレールシステムの開発に取り組んでいる。これは、今回開発した1800気圧コモンレールシステムよりもさらに燃焼の効率が上がるという。
(大村 泰憲)


ピエゾインジェクタ採用の1800気圧コモンレールシステム


ピエゾインジェクタ(カットモデル)
連絡先 : デンソー 東京支社 03-3273-2005 (代表)
関  連 : デンソー (ニュースリリース)
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