携帯電話のコンバージェンス化が明確に[動画付き]
---3GSM World Congress 2006から
携帯電話が単なる通話機能から、音楽や映像、デジタルテレビ、決済などさまざまな機能をコンバージェンスする方向が世界的にも動いていることがはっきりしてきた。2月13日からスペインのバルセロナで開かれている、最新の携帯電話技術・サービスの総合展示会・フォーラムである3GSM
World Congress 2006において、この傾向が見えてきた。コンバージェンスの傾向の中でも、今回の展示会で最大の目玉は、デジタル変調によって放送を流すモバイルTVだった。
日本の携帯電話機はこれまで世界一といえるほど進んではいるが、その市場は日本国内だけに留まっていた。携帯電話機メーカーがその市場をさらに発展させようとすればグローバルに展開していくしかない。これまでのNECや松下電器産業などがグローバルに出ていったが各社の市場シェアは2%にも満たない。
もはや、国内のキャリヤだけに頼れない。幸いなことに世界の携帯電話機市場でもさまざまな機能のコンバージェンスの傾向がはっきりしてきたが、これは日本のメーカーが世界市場に即参入できるチャンスだ。デジタル家電関係のさまざまな機能を携帯電話に搭載していくものだからだ。しかし、世界市場への参入が遅れてしまえば、せっかくのコンバージェンス技術を持っていても生かせないことになる。急がなければならない。
モバイル電話機が世界大手から
今回の3GSM World Congress 2006での最大のトピックスは、モバイルテレビである。欧州のデジタルテレビ放送DVB-H方式を受信する携帯電話が韓国のSamsung
ElectronicsとLG、フィンランドのNokia社、米Motorola社(動画)をはじめとするさまざまな企業からデモンストレーションされた。携帯電話メーカーだけではなく、ネットワーク機器メーカー、半導体メーカーなどが携帯電話機そのものを展示しなくても、モバイルTVのソリューションを出している企業が多かった。
デジタルテレビは、受信できれば全くちらつきのない画面を見ることができたるめ、モバイルならではの応用だとして世界中で注目されている。
もともとデジタルテレビは、デジタル技術特有の誤り訂正機能を搭載できるため、多少のちらつきに対してデジタル補正をかけられる。このため画面のちらつきがない、という特長がある。しかしこのメリットは、アンテナの向きを最適方向に固定している家庭の据え置き型テレビではさほど大きなものではない。日本に先駆けて英国で始まった地上波デジタルテレビ放送は、英国でもいまだに普及に至っていない。しかし、携帯テレビや自動車のように絶えず動き回っているデバイスではいろいろな方向に向けても画面がちらつかないという、デジタルテレビのメリットを最大限に得られる。ただし、アンテナの向きによって受信できないほど弱すぎる電波では全く映らない。つまり、全く見られないか、きれいに見られるかのいずれか一方しかないため、受信できる場合は安心して見ていられる。
Samsungはデジタルテレビ規格であるDVB-H(digital video broadcast-handheld)方式およびDMB(digital
media broadcasting)方式の受信デモを行った。DVB-H方式は、IPデータキャスト・プロトコルを使い、先端の誤り訂正機能を持ち、多数のチャンネルを放送するための広い帯域を持つ。IPデータキャスト・プロトコルはDVB-H方式に向けた新しいプロトコルで、モバイルネットワークあるいはモバイル放送いずれにも対応できるという特長がある。
DMB方式は既存のインフラを使えるというメリットがある。Samsungは、韓国ではいち早くDMB方式のデジタルテレビ携帯電話を出している。中国市場でも出荷しているといううわさもある。DMB方式には地上波のT-DMB方式と、衛星放送のS-DMB方式の二つをSamsungは電話機モデルを今回出展した。どの方式が主流になるかまだ予断を許さない状況の中で、との方式でも対応できるようにSamsungは開発をリードしているといえよう。
Nokia社はDVB-H方式の携帯電話モデルを展示したが、今年の中頃に市場に出ると予測している。
開発キットも盛ん
Philipsは、第二世代のモバイルテレビのフロントエンドチップをこの展示会で発表した。DVB-H方式を使うこのBGT215は、以前発表した15x26mmのチップに比べて1/6と小さく、7x7mmしかない。携帯に集積しやすい。このチップには、チューナとチャンネル復調機能を集積しているのに加え、将来の規格のアップグレードに備えプログラム可能な回路も集積している。このチップは、欧州およびアジア市場を狙っている。このチップは3月から世界のトップ携帯電話および携帯テレビメーカーに限定してサンプルを出荷する計画だ。
NECはこのPhilipsの前のバージョンのチップをフロントエンドに使い、ARM926コアを3個搭載したマルチコアプロセッサをバックエンドに使った開発キットを試作、モバイルテレビのデモを行った。さらに、ARM11コアを4個使い250MHzクロックで対称的な動作を行わせたマルチコアプロセッサによる次世代携帯テレビのデモも行った。すでに欧州企業から引き合いが来ているという。欧州ではモバイルテレビの試験放送から、サッカーのワールドカップの頃に正式に放送に採用されそうな動きだといわれている。
ルネサステクノロジは、デジタルテレビに合わせた機能をSH-Mobileマイクロコントローラに搭載し、携帯電話機でデジタルテレビを見られるような開発キットをデモンストレーションした。ルネサスの特長は、いろいろなフォーマットに対応していることだ。欧州と米国が力を入れている、DVB-H方式はもちろん、韓国と中国が熱心なDMB方式、さらにはワンセグで使われている日本独自のISDB(integrated
services digital broadcasting)-T(terrestrial)方式の三つに対応できる。
DMB方式は、デジタルラジオのインフラをそのまま使えるため、いち早く市場に参入できる。衛星を使ったS-DMB方式は15フレーム/秒とコマ数が少ないが、地上波を使うT-DMB方式は30フレーム/秒と自然の画面が見られる。ルネサスは実際に韓国で携帯電話を購入、会場でデモした。DMBの2つの方式を使った韓国製携帯電話機は連続動作で4時間見られるという。
米国企業も負けていない。シリコンバレーに本拠を置くNeoMagic社は、デジタルモバイルテレビ半導体チップおよびソフトウエアのソリューションMeoMobileTVを開発した。このソリューションは業界規格DVB-HとISDB-T、DMBをサポートできる。独自の並列処理マルチメディアエンジンの上で簡単なフィーチャーを携帯電話に搭載すれば低消費電力で簡単なインターフェースで携帯電話でテレビが見られるようになる。2006年第2四半期には電話機メーカーに向け出荷できるという。
そのほか、NortelやSiemens、Alcatelなどは電話機モデルは展示しなかったが、モバイルTVソリューションとして、ボードレベルやソフトウエアレベルでの開発状況を示した。
RFID+カードリーダー
オランダのPhilips社、韓国のSamsung Electronics社、スペインのTelefonica Moviles
Espana社がRFIDと同程度の近距離通信による新しい決済や、有料の会議エリアへの入場などの取引を実現する技術NFC(Near
field communication)を共同で開発、3GSM World Congress 2006の会場でデモンストレーションを行った。このシステムは、RFIDチップを携帯電話に搭載した、単なるお財布ケータイではない。Philips
とソニーが共同開発したFelicaと互換性を持つが、ID機能やRFIDチップからの情報を読み取る機能も集積したNFCチップを搭載したもの。
FelicaなどのRFIDカードの中にある情報を読み出して携帯電話機の液晶ディスプレイに表示することもできる。実際、筆者の入場カードを携帯電話で読み取り、企業名と電話番号、住所、電子メール番号などを携帯電話の液晶画面に表示していた。また、お財布携帯と同じように端末を見ながら買いものメニューを決め、購入することもできるが、購入が決定すると領収書を端末がプリントアウトする。
セキュリティレベルが高く、EAL5+だという。セキュリティ部分のソフトウエアにはOSを使わない。情報は直接セキュリティデバイスにダウンロードされる。また、BluetoothやWiFiではその認証機能を使って、そばにBluetooth電話があっても優先的にNFCチップを内蔵している携帯電話を認識する。このため、すぐに接続できるという。Samsungが開発した携帯電話に載せたデモを行った。