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DNニュース

2006年09月21日

PLMソフト、Windchill導入とその後の可能性

PTCのソリューションズ・マーケティング担当バイスプレジデント、Robin L. Saitz氏

 米Parametric Technology Corp.(PTC)は、Arbortext社を2005年7月、Mathsoft社を2006年4月に買収し、ArbortextとMathcadをPTC社の製品群に取り込んだ。Arbortextは、XMLをベースとする文書の作成、配信などを行うソフトウエア。Mathcadは数学的な計算や科学的な計算を行い、それを文書化するソフトウエア。
 PTCのソリューションズ・マーケティングを担当するバイスプレジデントのRobin L. Saitz氏に、PLMソフトウエアWindchillの導入状況や、ArbortextおよびMathcadとPro/ENGINEERなどの既存製品との連携を中心に聞いた。

 Q 日本やその他のアジア地域の企業からWindchillの最新バージョンへの移行が難しいという声が出ているがそれはなぜか。
 A Windchillの初期の顧客は、Windchill Foundationを導入した。Windchill Foundationは、Windchillの最初のバージョンである。Windchill Foundationの初期バージョンは、製品というよりも、アプリケーション・ツールキット(アプリケーション開発ツールキット)だった。Windchill Foundationを買う顧客は、同ソフトウエアを使うために、Windchill Foundation上にアプリケーションを開発しなくてはならない。これがカスタマイズ化となった。
 アジア太平洋地域では、多くの顧客がWindchill Foundation 5.1を使っている。これらの顧客はWindchill Foundationを導入後、大量にカスタマイズした。同製品には彼らの求める標準機能が備わっていなかったからだ。その後、Windchillを構成する製品の一つであるWindchill PDMLink(図1)が登場し、これは多くの標準機能を供給し、Windchillを導入しやすくした。

図1:Windchill PDMLinkのスクリーンショット

 初期バージョンのWindchill Foundationは、インストールおよび導入が難しかったといえる。導入には1年ぐらいかかってしまっていた。一方、Windchill PDMLinkはより早く導入することができ、6、7週間で導入できる。つまり、顧客はアプリケーションを作成する必要が無くなったのである。しかし、Windchill Foundationを使っている多くの顧客は、まだWindchill PDMLinkに移行していない。大量にカスタマイズしたため、Windchill PDMLinkへ移行しづらくなっている。北米で登場した製品が遅れて日本に入ってくるため、Windchill Foundationの顧客が、大量のカスタマイズを行っており、Windchill PDMLinkに移行するのが遅れているのである。
 顧客が大量にカスタマイズしてしまうと、それは我々にとっても問題だ。我々は顧客に大量にカスタマイズして欲しくない。サポートするのが難しくなるからだ。大量にカスタマイズしてしまうと、顧客は最新バージョンの新しい機能を取り込めなくなってしまう。トヨタが語ったことだが、彼らはWindchillに備えられる標準機能を利用し、導入後に独自の機能を作らないようにすることにかなり興味を持っている。トヨタはソフトウエアの最新機能を受け入れられるようにしたいからだ。ソフトウエアをカスタマイズしてしまうと、これは難しくなってしまう。

 Q 米国ではすでに多くの顧客がWindchillの最新バージョン、Windchill 8.0を導入しているのか。また、そうであればなぜ導入できるのか。
 A 導入しはじめた。Pro/ENGINEERのデータを管理するPro/INTRALINK の最新バージョン、Pro/INTRALINK 8.0はWindchillをベースにしている。現在、Pro/INTRALINKを利用している顧客は、Pro/INTRALINK 8.0に移行するか、直接Windchill PDMLinkに移行するオプションを持っている。このオプションは2005年6月に始まり、世界中の顧客はWindchillに目を向けるようになった。次世代の製品に移行しようとしている顧客のうち、60%がPro/INTRALINK 8.0に、40%がWindchill PDMLinkへ移行しようとしている。Pro/INTRALINK 8.0に移行する顧客は、Windchillに依存することになり、Pro/INTRALINK 8.0を導入することでWindchillの導入も改善できるだろう。北米および欧州の多くの顧客はPro/INTRALINK 8.0とWindchill 8.0へ移行し始めた。
 2007年の春にWindchill 9.0が出るが、これはWindchill Foundationの機能や、我々が2006年に追加したすべての機能と調和する機能を持つようになる。より多くの機能を持つため、顧客はあまりカスタマイズしないで済むようになるだろう。我々は、顧客にソフトウエアを設定するための機能を提供する。つまり、彼らがそのソフトウエアを設定しても、それはカスタマイズにならず、新しいバージョンへの移行が用意になる。我々は、顧客がカスタマイズせずに、ソフトウエアを彼らの用途に合わせられる方法を提供しようとしている。

 Q PTCがターゲットとする顧客は大企業だけなのか、それとも中小企業もターゲットにしているのか。
 A 大企業だけでなく中小企業もターゲットとしている。たとえば、IBMがホストする環境でWindchillを利用できるオプション、オンデマンドバージョン(PTC PLM On Demand Standard)がある。このオンデマンドバージョンは、スタートアップ料金が安く、ライセンス基準の代わりに、サブスクリプション基準(定期購読方式)で料金を支払うようになっている(PTCジャパンのウェブページには、ニーズの変動に応じた固定セットアップ料金と月額の購読料金を選べる、とある)。Windchillの5シートは高額だが、このオンデマンドバージョンの5シートはきわめて手ごろな価格になっている。顧客は二日以内で同バージョンをセットアップして実際に利用できる。
 同バージョンは小企業をターゲットにしているが、小企業の中には、彼ら自身でホストすることに価値を見いだす企業もある。つまり、どの製品を導入するかはその企業や要求、容量、機能、ITを管理する環境などに依存しており、企業の規模だけでは決まらないのである。

 Q ユーザーはMathcadをどのように利用できるのか。
 A まず、我々が解決しようとしている課題についていくつか紹介する。多くの企業では技術的計算を行う場合、工学の公式を掲載したハンドブック(手引き書)を使う。例えば、エンジニアが公式を探し、それを紙の上やノートに書き取る。そして、計算機(電卓)を取り出し、答えを計算し、その答えを設計に利用する。あるいは、スプレッドシートを使いそのような情報を作成する。このような方法では計算結果をどのように導いたかを示す多くの技術的知識は失われてしまう。日本では、多くの労働者が年を取り、引退していく。彼らが引退するとき、その知識は彼らとともに会社から出て行ってしまう。彼らのすべての技術的知識を記録する方法は役立つ。
 もう一つの問題は、直感や経験に頼る技術者がいるということだ。「この前このような物を設計した時は、この材料を使い、シャフトはこの厚さにしたから、今回もそのように設計しよう」あるいは、「安全をみて、材料の厚みを2倍にしよう」などと彼らは言うだろう。そして、技術計算を行わず、彼らは、CAEツールに頼り、良い決定をしたのかどうか確認する。このため、結果が良くならないと、材料の厚みなどを変更し、再びCAEを利用して解析し直すという作業を何度も繰り返すため、最終的な決定を下すまで多くの時間がかかってしまう。
 設計に関わる技術的な決定は、しばしば提出書類をサポートしなくてはならないことがある。たとえば、企業はある種の要求を受け取り、要求の中には見た目(esthetic)、ルック&フィールに関する要求があり、これらの要求は設計グループに直接伝えることができる。しかし、要求の中には、エンジニアがある種の計算をしなくてはならない技術的な性質に関する要求もある。
 エンジニアが行う計算は、数学や科学原理に基づいたものかもしれないが、独自のものもある。例えば、トヨタは彼らが考え出した多くの技術的計算のライブラリを持っていて、技術計算を行う時に、これら両方の計算が行えるようにしたいのである。
 多くの企業は技術計算を行うためスプレッドシートを使うが、多くの制限がある。Excelのスプレッドシート内の個々のセルに計算式を入れても、それを理解するのが難しい。スクロールダウンして参照したいセルを探すのに苦労する。また、単位の管理機能を持たない。
 一方、Mathcadの作業書(ワークシート)は技術者のノート(筆記帳、メモ帳)のようなものだ。ワークシート上に各種計算式などが表示されており、計算結果がどのように算出されたのかを理解できる(図2)。このワークシート上の計算(式)は生きており、数値をダブルクリックして変更できる。その変更により、すべての計算は更新される。単位についても同様で、例えば、ワークシート上のmmをダブルクリックして、インチに変更すると、自動的に計算値も変更される。エンジニアはこのワークシートを読むことで、計算を簡単に理解できる。

図2:Mathcadのスクリーンショット。ワークシート上に各種計算式などが表示されており、計算結果がどのように算出されたのかを理解できる

 コピー&ペーストである計算をほかのワークシートにはり付けると、その計算がどこからきたのかの履歴が残されるようになっている。これはとても重要なことだ。書類を提出する時に、どのようにしてこのような決定が成されたかを知る必要があり、その決定がなされたプロセスをさかのぼらなくてはならないからだ。
 ユーザーはMathcadのワークシートを設計モデルの挙動を推測するのに使い、Pro/ENGINEER Mechanicaを利用してその結果を確認できる。工学に基づいて、設計モデルがどのようなものになるのかを決定し、それが良い決定なのかどうかをPro/ENGINEER Mechanicaで確認できるため、変更して確認するという繰り返し作業を削減できる。人間の感覚で決定した場合よりも、設計して解析するという繰り返し作業をはるかに減らすことができる。
 この計算はXMLフォーマットであり、Arbortextで利用することもできる。また、Arbortext EditorやMathcadの技術計算、Pro/ENGINEERのデータは、Windchillに保存され、Arbortextのパブリッシングエンジンにより、ユーザーがさまざまな種類の文書を作成できる(図3、図4)。

図3:Arbortext EditorやMathcadの技術計算、Pro/ENGINEERのデータは、Windchillに保存され、Arbortextのパブリッシングエンジンにより、ユーザーがさまざまな種類の文書を作成できる
図4:ArbortextとWindchillの統合イメージ

 さらに、Mathcadの計算はPro/ENGINEERの設計モデルに反映される。ユーザーは公式(計算式)を組み込んだMathcadのワークシートを作成し、その計算式内のさまざまなパラメータをPro/ENGINEERの設計モデル内のパラメータにリンクさせることができる(図5)。Mathcadのワークシート上に変更を加えると、Pro/ENGINEERの設計モデルにその変更が反映される。また、Pro/ENGINEERモデルを変更すると、Mathcadのワークシート上のその変更に関係するパラメータも変更される。

図5:ユーザーは計算式を組み込んだMathcadのワークシートを作成し、その計算式内のさまざまなパラメータをPro/ENGINEERの設計モデル内のパラメータにリンクさせることができる

 WindchillとPro/INTRALINKは、MathcadとPro/ENGINEERの間などで成されるこのような変更の流れを管理する。我々はMathcadとPro/ENGINEERの間の連携においてWindchillにMathcadのワークシートを管理させるという計画を持っている。そして、Windchillからの画像、Mathcadで作成された計算(式)をArbortextで書かれたテキストに含め、Arbortextがより情報量の豊富な文書を提供できるようにしたい。

図6:Arbortextを使うことで、ユーザーはリンクをはり付けたHTML文書を作成できる

 Q Arbortextで作成されたHTMLフォーマットの文書についてのデモが行われ、その中で自動車エンジンの3次元モデルを使った解体の手順を動画で見せていたが、これは現在可能な機能なのか。
 A あのデモはモックアップで、まだ、この機能は提供していない。しかし、現在Arbortextを使うことで、ユーザーはリンクをはり付けたHTML文書を作成できる(図6)。近い将来、対話式の(インタラクティブな)画像を組み込んだHTML文書を作成できるようになる。デモで行われたような自動車エンジンの3次元モデルを使った解体の手順も対話式で示すことができるようになる。文書中に組み込んだ3次元モデルを回転したり、そのモデルのある要素だけを表示させたりすることも可能になる。さらに、動画も組み込めるようになるだろう。視覚的に作業手順などを理解できるようになるため、ユーザーは多くの文字を文書に書き込む必要がなくなる。また、他の言語に翻訳する文章量も減り、コストを大幅に削減できるようになる。図や動画で解体の手順を表示できれば、作業者にとって分かりやすくなり、翻訳量も減り、翻訳にかかるコストを削減できる。
(聞き手:大村 泰憲)



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