科学技術振興機構(JST)が管轄する、東京大学の中村栄一教授、産業技術総合研究所の末長和知博士、東大の磯部寛之助教授の研究チームは、有機分子の化学構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察することに世界で初めて成功した。
市販の分子模型を見るように実際の有機分子の形の変化を観察することは、分子が真空中で数十m/sと素早く動き回ることや、分子観察が可能なレベルの高い解像力を持つTEMが電子線照射の熱エネルギーで有機分子を分解してしまうため、実現が難しいと考えられていた。
今回の研究成果では、細胞膜の主成分の脂質分子に似た構造を持つ化合物を設計・合成し、これを真空中で揮発して単一の有機分子を孤立させて、カーボンナノチューブ(CNT)の中に閉じ込めた。これにより、分子の動きを遅くすると共に複数分子への電子線照射で起こる分子間での反応を抑制することが可能になり、単一小分子のTEMによる観察を実証し、飽和炭化水素の鎖の動きやチューブの中を往復する様子なども動画で記録した。
観察対象となった分子は、ホウ素クラスターと柔軟な鎖状分子(炭化水素)を結合したもの。今回は直径0.9nmのCNTに閉じ込めてのTEM観察に成功しており、さらに直径1.2nmのCNTの場合には、2つの炭化水素鎖がゆっくり回転する様子を約40秒(露出時間0.5秒、2.1秒単位撮影)間の連続画像として撮影することができた。また炭化水素の鎖がある形状から別の形状に飛び跳ねるように変化すること、分子が前後に10nm/s程度の速度で運動すること、速度変化からCNTと有機分子の間で分子レベルの摩擦が起きていることなどの現象を確認している。なおTEMは、解像度2.1オングストローム、加速電圧120kVの日本電子の製品を使用している。
同研究は、JST戦略的創造研究推進事業総括実施型研究(RTATO)の中村活性炭素クラスタープロジェクトのもと、文部科学省科研費補助金を使って実施された。詳細については、米Scince誌の電子速報版Science Expressで公開される。
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東大とJSTと産総研、分子の構造変化の動画撮影に成功
[issued: 2007.02.26]
カーボンナノチューブに閉じこめられた、炭素鎖長12の一重鎖を持つ分子の電子顕微鏡観察像(上)とモデル図(下)。バーの長さは1nm。モデルの原子はピンクがホウ素、灰色が炭素、白が水素












