CoCreate Forum 2007
「革新的なものづくりが、企業の競争力を強化する」
【事例発表V】
生産技術部門での3次元CAD活用
日立金属の生産システム研究所は、日立金属グループにおける新製品や新技術の開発を支援するのが使命である。そこに求められるのはアイデアや構想であり、それを支援してくれる3次元CADだった。生産システム研究所主任研究員の西尾元秀氏は「ノンヒストリーのOneSpace Modelingは、予想どおりの構想支援に大いに有効だっただけでなく、予想を上回る効果も得られた」と導入効果を語る。
日立金属株式会社 生産システム研究所 主任研究員 西尾 元秀 氏

- 日立金属株式会社 生産システム研究所
主任研究員
- 西尾 元秀 氏
日立金属が手がける製品は大から小まで多岐に渡っているが、金型材に代表される高級金属製品、マグネット(磁石)に代表される電子情報部品、そして自動車用アルミホイルや耐熱鋳造部品に代表される高級機能部品の3つに大別される。生産システム研究所は日立金属グループの生産技術の総本山という位置づけで、新製品の開発と同期した生産技術の開発を使命とし、日立金属グループにおける新製品や新技術の開発を支援する。主に製造設備やプロセスの開発などを行う。
生産技術における設計業務は、製造プロセスを改革するための斬新な設計を求められるのが特徴。つまり、アイデア勝負。新製品・新製造プロセスの場合、前例のない機械装置の設計が要求される。多種多様な規模の設計があり、機械装置の場合は数千から数万パーツの大規模アッセンブリになることも多い。製造装置なので1台しか作らず、試作がほとんどないが、実験機を作って多くの実験を重ねた上で装置を作るというプロセスは日常的。また個々のパーツの形状は四角や丸の単純なものが多く、自由曲面はほとんどない。設計規模が大きいので数人によるチーム設計が多く、作るものが多岐に渡るので製造部門を持っておらず、外部委託している。従って2次元の製作図が全てに必要になってくる。
以上のようなことを背景に3次元CADの導入に取り組んだ。改めて言うまでもないことだが、設計者はいつもアイデアを考えているが、その際、頭の中に浮かぶ形状は3次元。実際に作るのも3次元形状。しかし、中間で表現するために2次元の図面が必要だ。あるとき私はこれに非常な不満を感じるようになった。なぜ3次元で考えているのに2次元にする必要があるのか、と。そこから3次元CADの導入検討が始まった。当時、製品設計部門では3次元CADが盛んに使われていたが生産技術部門での導入は少なかった。それは生産技術部門で扱うパーツには曲面がない、CAMに繋がらないといった状況なのに、3次元CADを導入してもメリットがないという意見が多数だったからだ。だが、3次元形状を扱う限りは3次元CADはメリットがあるはずだと、導入を検討した。
設計者の頭の中にあるアイデアは自由度が高いが完成度は低い。それに対して3次元CADで作られたデータは、完成度は高いが自由度は低い。そこで一般的には頭の中のアイデアをすぐに3次元CADで表現するのは難しいのが実情。恐らく、その間を繋ぐものとしてフリーハンドの絵や2次元CADがある。しかし、創造的な部分に使えないのでは何のための3次元CADかという思いがあった。そういうことから、ヒストリー系のCADは設計者の頭の中にある構想を表現する上では問題があるが、設計者のアイデアを簡単に表現する3次元CADが当研究所では必要と判断した。
そこで3次元CADの選定に当たっては、構想設計に使えるということを一番重視した。いくつかのノンヒストリー系の3次元CADを調査し、実践的に使ってトライした結果、「OneSpace Modeling」を選択し2001年、チーム設計を行うツールである「OneSpace Model Manager」と合わせて導入した。
果たして導入の効果はどうだったか? 先に話したように当研究所では一品一様で機械装置を設計しているので、同じものと比較することができない。従って非常に定性的な表現になるが、まず、予想通りの効果としては構想発想支援が有効だった。つまり、頭の中にある構想を3次元で表現することでアイデアの再確認が出来る。以下、設計の完成度向上や設計効率の向上、完璧なチーム設計体制の確立、解析など3次元データの有効活用、プレゼンテーションの向上、などが挙げられる。
予想を上回る効果としては、設計の部分ではなくデザインレビューがある。これは圧倒的だった。何しろ当研究所の場合は試作を作らないので、不具合があった場合は作った実機をそのまま手直しすることになる。その点、デザインレビューが出来て後戻りがないので非常に効果的だ。また、2次元CADとの連携が非常に有効ということも分かった。
機械装置の設計事例を二つ紹介する。一つは自動機と多間接ロボットを組み合わせたロボットセル。この場合に問題となるのは、ロボットは3次元空間をかなり高い自由度で動き回る。非常に便利だが、それゆえにロボットと周りの装置の干渉などが問題となる。従来、そうしたチェックは2次元CADを使って様々な角度から見た絵を描いて念入りにチェックしたものだが、それでも十分には検討しきれないので寸法に余裕を見た設計をせざるを得なかった。3次元になるとそうしたチェックが念入りに、かつ完璧に出来る。従ってOneSpace Modelingを活用することによって省スペース化が実現した。面積効率が従来比で2倍になった。
もう一つの事例はアッセンブリ数2500、パーツ数1万7300という大規模プラント。装置のレイアウトや複雑な作業デッキ、階段などを3次元CADで設計した。現場の作業者と綿密な検討を実施したが、その際、作業者は事前に作業動作のイメージを確認できた。また、従来は作ってからの試運転ということになるので、手直しや解体作業などが少なくなかったが、3次元活用を活用することにより、前倒しで設計や解析をしながら作りこむことができる。こうしたことから3次元設計は、トータルな部分で効果が得られる、極めて有効なソリューションであると言える。